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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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「エレナってものすごく賢いわよね。聡いと思うわ。」


そう言うとエレナはとぼけたフリをしておどけて見せる。


「私がクレア様くらい頭が良ければ父に怒られることもなく、上手いこと立ち回って毎日お茶会三昧のお嬢様暮らしをするのですけどね。行儀見習いで奉公なんて今時しないと思いませんか?父の頭がカチンコチン過ぎて困ります。これで王城で良い出会いがあって貴族と結婚できれば更に良いのでしょうけどね?」


たくさん話をして、深夜になる頃エレナも自室へ戻っていった。

エレナは人に気を遣わせないように振舞ったり、心の距離を縮めるのが上手い。

外交的にその能力を身に付けたいのもあるが、純粋に人との接し方として大変参考になる。

領主としてだけでなく、もっと色んな私を私自身が見つけて、私らしく私が私になれるように頑張りたい。


私も頭が硬い部類で間違い無いが、エレナのお陰で随分柔らかくなったのではないかと思う。


幸せ探しをしつつ、幸せ報告会もエレナと開催していこう。


そして色々なことに想いを巡らせつつ、やはり事件のことが気になる。

結局私を攫った者たちの正体は何者なのだろうか。

アイリーンなのか、あるいはただのオズワルド側の人間なのか。

オズワルドは幽閉されており、今後牢から出されることは無いと聞いている。

叔母や従姉妹たちは身分の剥奪とともに領外へ追放された。

平民としてどう暮らしているのかはわかっていないし、どこに居を構えているのかすらわからない。


あの大男はきっと捕らえられたに違いない。

あとは他の仲間があそこに来れば捕らえられるが、きっと異変を察知して寄り付かないだろう。

大男が何か情報をもたらしてくれると良いが。


とにかく今は休もう。

そう決めて、早速今日1日の幸せを考えた。


1番は無事に脱出できたこと。

助けが来てくれたこと。テッドも、殿下も、私を助けに駆けつけてくれた。テッドは重傷を負ってしまって申し訳ないし、殿下に至っては単身で乗り込んで、万が一の可能性も考えると国の危機にも繋がりかねなかった。

エレナに会えて、たくさんお話しをしたこと。

美味しいお茶を飲むことができたこと。

温かい風呂と、寝心地の良いベッドがあること。


…生きていること。


1人ではないこと。


こんな日でも幸せはたくさんあった。

でも、幸せを考えると、その向こう側のことも考えてしまう。

テッドはあれだけの重傷を負って戻ることができたのか。

後遺症の残るようなことにならないか。

まさか、命を落とすなんてことも無いか…。

先ほども考えたように、私のせいでテッドの命も、殿下の命も危険に晒したし、殿下に万一のことがあれば国の大問題だ。次期国王なのだから。


幸せとは私だけ幸せでは本当の幸せではないような気がする。

私の幸せの裏で不幸な人がいれば、その犠牲の上にあることになり、犠牲のない幸せはどれだけあるのだろう。


王城の滞在にかかる費用も税によるものだ。

国民に還元すべき税を私なんかのために使わせてしまっている。

このベッドも、先ほどのお風呂も。

エレナの仕事も増やしてしまった。


今日の幸せは全て誰かの負担になっているのではないか。


哲学的なことかもしれないが、従来のネガティブな性格ゆえに、ただ良かったことを考えるということはできなかった。



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