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「クレア様、光栄ですわ。クレア様こそ、人を惹きつけてやまないのですよ。見目の麗しさはもちろんですけど、時々見せる寂しげなお顔ですとか、楽しげに笑われるところですとか、人が寄り添いたくなる魅力があるのですからね!ですから王太子殿下もクレア様に夢中なのですよ。」
他人の目に私がどう映っているのかなんて特に気にしていなかった。
いない者として扱われ、今は重要人物として扱われ、私自身が待遇の違いに戸惑うことはあるが。
「私、他人の目なんて気にしたことがないの。私が領主として有能か否かという点しか気にしていなかったのよ。それによって私の存在価値が変わるから。このままここに存在して良いのか、何のためにここにいるのか、毎日そんなことばかり考えるの。」
エレナだからこそ色々心の中を見せられる気がする。
「クレア様は「領主クレア・ディアス」としてしか存在していないとお考えですか?違いますよ。貴女は領主である以前に、「クレア・ディアス」としてこの世にいらっしゃるのです。私も立場上は身分が異なるため尊敬を持って接しておりますが、貴女は私の「友人クレア・ディアス」なのです。貴女は貴女。1人の人間です。きっと周りの方々もそうですよ。だからこそクレア様を支えたい・力になりたいと思っているのではないでしょうか。」
そうかもしれない。
領内の安定的な運営のために皆で力を合わせていると思っていた。だから協力合えているのだと。
けれど、私のような若輩者の考えを尊重して、それを支えてくれるのは単純に領地のためではないのかもしれない。
「私って私が思っているよりもかなり恵まれているのですね。不幸自慢ばかり自信を持ってできるのですけど、幸せ探しをしたら案外不幸自慢話よりもたくさんあるのかもしれません。」
今まで気づかなかった、気づけなかったことがたくさん見つかる。
それは幸せも。
小さな幸せが集まれば、いつか大きな幸せになるのか。
「『幸せ探し』良いですね。ご飯が美味しかった!お風呂が気持ち良かった!布団が温かかった!なんて。」
「そうね。毎日の日課にします。今日の幸せは何個って毎日日記でもつけようかしら?楽しいことを考えると楽しい気分になるわ。さて、そろそろ上がりますね。」
湯浴みを終え、部屋へ戻る。
エレナがすぐにお茶を淹れてくれた。
さっきとはまた違う種類のフレーバーティーだが、よく眠れる作用のあるもののようだ。お洒落な飲み物に縁遠いため、何というものかわからない。
「エレナ、今度お茶の種類や淹れ方などを教えていただけますか?私、お茶は『飲めれば良い』と作用など考えずに適当に飲んでいたので知らないのです。違うフレーバーティーが次々に出てくるのも楽しいので、もっとお茶に詳しくなって自分でも淹れられたらなと思うの。」
パァっと明るい笑顔で私のお願いを受け入れてくれる。
「もちろんです!私の趣味なんですよ。父も商工会なんてやっているものだから幼い頃からお茶出しをしたりもしていて。私自身がハーブのことに興味があってたくさん勉強したんです。」
そうだったのか。
エレナの趣味がお茶だったとは意外だ。
お茶会が好きとは聞いていたが。
「クレア様大分私に打ち解けた話し方をしてくださるようになってきましたね〜!私嬉しいです!そう言う私も執事長に見つかったら叱られるような砕けた話し方になりつつあるのですけどね〜!」
きっとエレナがわざと砕けた話し方で私に接しているのだろう。
私がもっと打ち解けられるように配慮してくれたのだ。




