44
「何でも?」
大男は私に聞く。
「ええ、だからお願いです。どうかその人を解放してください。」
吠えるように笑い、そして言った。
「じゃあ服を脱げ。」
服を脱げだなんて、と思いつつ、それで気が済むのなら安いものだ。
「わかりました。」
ドレスを脱ぐ。下着姿で大男を睨みつける。
しかし、下着姿で睨んだとて、相手には痛くも痒くも無い。
「肌着や下着も脱げ。」
言われた通りに脱ぐ。
全裸になり、恥も何もかき捨て、大男を正面から睨みつける。
「脱ぎましたけど。テッドを解放してください。」
大男は愉快そうに笑う。
「だってよ。お前は自由だ。出て行って良いぞ。ここに残って俺の遊び相手になっても良いが。どうすんだ?」
テッドは怯えるように泣きながら、動くのもやっとな動作で立ち上がった。
「クレア…すまない…」
そう言って外へ出た。
「アイツ逃げたぞ。お前を置いてな。この状況ならお前がどうなるか…予想できるよな。男なら尚更。逃げたぞ?婚約者を見捨てて。ひゃははは!」
涙を堪えて大男と対峙する。
「お前はどうするんだ?そんな格好で、何をする?」
私へ問いかける奴の楽しそうな顔に吐き気が襲う。
「何も。脱げと言われたから脱いだまで。解放してくださってありがとうございます。私に行動の決定権を与えてくださるのですね。私は寒いので服を着ます。」
そう言って服を着る。
大男はそれ以上何も言わずにただ私の行動を見ている。
「お前面白いな。だが、このままここで無事に暮らせるかわからんぞ。俺は紳士だからな。下衆な奴が見張りならお前は無事では済まない。せいぜい賢く立ち回るんだな。」
そう言うとパンと水を置いて出て行こうとした。
が、外から1人の人影が入ってきた。
まさか奴らの仲間が?と不安になる。
顔は帽子と布で隠しており、見えない。
「お前誰だ?」
大男がニヤニヤと問う。
と言うことは奴らの仲間では無い。
助けに来てくれたのか?
「クレアを助けに来た。お前は捕らえる。」
そう言うと大男と乱闘を始め、テッドのようになるのでは無いかと恐怖が襲う。
しかし、その人は強かった。
大男と互角に戦っている。
お互い血まみれだが、やや大男の劣勢のように見える。
足枷の解錠を試み、数回試すと外れた。
同時に、大男は倒れ、私が付けていた足枷を腕にはめて拘束した。
「クレア!逃げるぞ!」
そう言って手を引いて走り出す。




