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同じ年頃の従姉妹たちはこの城でどのような生活をしていたのだろう。
叔父や叔母に愛されて何不自由なく幸せに暮らしていたのだろうか。
両親が生きていれば、私も家族との幸せな時間や愛を得られたのか。
でもきっと3歳までの私は、両親に愛されて幸せだったはずだ。
もう朧げな記憶だが、強く立派な父と、優しく美しい母。優しく私の名前を呼ぶ両親の声。
本を読んだり、人形遊びをしたような気がする。
きっと私は幸せだったのだ。
どんな結果を命じられても、きっとその幸せに思いを馳せればこれからも幸せだろう。
しばらくするとノックが聞こえてきた。
「クレア様、広間へお越し頂けますか?お話がございます」
オリバー様に従い、広間へ行くと告げられた。
「貴女様は正当な領主としての家系でいらっしゃる。貴女がこの地を当主として治めていくのが妥当でしょう。しかし、貴女はまだ若い。そして政治の経験もありませんね。国の言いなりになって同じ悲劇を繰り返してはいけない。また、この度の反乱による成果を皆に周知する意味も込め、私の息子と婚儀を結んでこの地を治めては頂けないでしょうか?もちろん貴女の気持ちを尊重したく、婚姻は来年としてまずは婚約者としてお二人でお過ごしになり、改めて婚儀へ踏み切るかはご相談とさせて頂こうと思います。
治政につきましては私も補佐につきます。アーノルド様の代の補佐を集め、地盤を固めようと思います。
いかがでしょうか?」
皆が私を見つめる。
私は前を見据え、腹を括った。
「クレア・ディアス、この身をこの地に捧げます。命の限り善政を敷き、民のために生きていくことを誓いましょう。婚約の件もご配慮頂きありがとうございます。慎んでお受けいたします。」
こうして私は父の遺したこの地と城を受け継ぐこととなった。
叔父たちの今後は気にならなくはない。
しかし、関係が希薄な分どうこうしようとは思えないのだ。
私には何もない。
これから少しずつ手に入れていく。
今まで手にすることのなかったものを。
人間らしく生き抜く人生を送るのだ。
もう空っぽの人生には戻らない。
こうして私はゴールドガーデン地方の領主としてこの城の主となった。