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また色んな人に迷惑を、心配をかけてしまっていることを認識すると、申し訳なさが押し寄せる。
「そうね。…ごめんなさい。また私、一人で空回りしてたのね。みんなに心配ばかりかけてしまって。自分が情けないわ。」
俯く私をふいにエレナが抱きしめてくれた。
「クレア、あなたはまだ15歳よ。まだまだ世間知らずで、お茶会とかで噂話に花を咲かせるくらいの年頃の娘よ。領主としての重圧だけじゃないたくさんのことを抱えているのだから、たまには押しつぶされそうにだってなるわよ。ううん、たまにどころじゃないわ。私なら日々プレッシャーでおかしくなると思うわ。あなたはよくやってる。お飾りの立場なら何も無いだろうけど、あなたは役目を十二分に果たしているわ。だからこそ、よ。」
背中を優しくトントンとリズムよく撫でるようにたたきながら抱きしめられると、途端に目頭が熱くなった。熱すぎて頭痛がするほどだ。
しばらくエレナの腕の中で泣いていると、次第に落ち着きを取り戻した。
「…ありがとう。だけど本当に私の空回り癖はどうにかしたいものだわね。このままではいつまでも変な態度で周りを振り回してしまうわ。」
私の空回り癖はどうしたら改善するのだろうか?
このままでは同じことを何度でも繰り返すだろう。
その度にまたみんなに心配をかけてしまう。
「私じゃダメ?お茶の時でも、あるいは仕事中でも、いつだって良いのよ。プレッシャーでも何でも、不安や何かおかしな気持ちが湧いてきたら話してみて。悩みなら一緒に悩みましょう。解決できなければオリバー殿でもどなたでもあなたの力になってくれるんだから、みんなに相談できるわ。私にも言いにくいことなら他の誰かにでも。忘れないで。みんなクレアのことが大好きなのよ。みんなあなたの力になりたいのよ。頼るってお願いすることだけじゃ無いわ。話してみることでも心の整理の手伝いができるのよ。何でもかんでも話してってことじゃないけど、少なくとも、あなたの中で良い感情でない何かがあれば、その時に話してみることで気持ちが整理できると思うの。」
話すだけでも、というのは確かにそこまでハードルは高くない。
気持ちの整理がうまくできるようになる訓練と思えば、行き場のわからない気持ちの方向をどこに向けていけば良いかのアドバイスをもらえたら、それだけでも何か変わるかもしれない。




