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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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この前まではその日暮らしがやっとな生活をしていたのに。

それが領主となって、毎日仕事。

婚約についても2度も婚約することになるなんて。

しかもその相手は王太子殿下。

側妃ではなく正妃としてなのだから、エレナの言うように未来の王妃となるのだ。


自分でもこの展開は非現実的であると感じる。


このままただ幸せを噛み締めるだけの生活は絶対にしない。

少しでもゴールドガーデンのためにできることをできる限りやって、より発展させていきたいし、ダンが跡を継ぐまでは盤石な体制を整えたい。


殿下は少しでも早く婚約式を行う・婚姻を早めると息巻いておられたが、私は婚約も婚姻も嬉しいと思う反面、当初の『期限』まで待ってから話を進めて頂ける方が有り難いと思ってしまう。

王太子妃となってしまってからではきっと妃教育で手一杯で領地のことを気にかけられないだろうから。

そもそも私ほど貴族令嬢として出来の悪い王太子妃候補は他に居ないだろう。

今でこそ伯爵であり領主だが、少し前まではほぼ乞食同然だったのだから。

問題ばかりが山積みであるように思える。


なるようにしかならないし、だからこそやれるだけやる。

それしか無い。

わかってはいるが、やはりプレッシャーを感じてしまう。


夢に見るのだ。


「実績があるとは言え、所詮は周りの大人の功績だったのだろう」

「貴族たるマナーも態度もなっていないのに、国母となるなんて有り得ない」

「見た目だけのお飾りにしかならない」

「自領も無責任に人に押し付けて去るだなんて」

顔の見えないシルエットたちが口々に私を罵る。

私はそれに何も言えずにただ俯いている。

マーティン殿下はそんな私に気付かず数メートル先で貴族たちと談笑している。

そんな夢。

それが現実になることが恐ろしい。


だからやれることをやり尽くしてから婚約などの話を進めたいと思ってしまうのだ。

跡を継ぐダンに苦労をかけないように、私自身が後ろ指をさされることのないように。

私のせいでゴールドガーデンの立場が悪くなってもいけないし、王家の威信が落ちてしまってもいけない。

私がそんなことになってしまったら心が持たない。


プレッシャーの中私は仕事に没頭することでそれから目を背けていた。


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