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ダンは少しため息を吐きながらも優しい表情を崩さない。
「私は昔から人の顔色を伺いながら何を考えているのか、何を求めているのかをずっと観察する癖があるのです。僕自身は恋愛感情はわかりませんが、姉様が殿下のことを特別に思われていることはわかります。そして私が観察してきた姉様の反応は、恋物語の愛し合う2人の正にそれなのですよ。実際他の男性にはなさらない反応です。特に見つめ合う時のお互いの眼差しなんて見ている方が照れてしまうくらいに熱々なご様子ですよ。」
こんなところでそんなことを子どもたちの前で子どもに言われるなんてと慌てふためいてしまうが、そうなのかと思ってしまう自分もいる。
「この話しは政治的な要素もあるのでこれでお終いよ。みんなも今ダンが話したことは忘れるか、死ぬまで誰にも話してはダメよ。」
興奮冷めやらぬ様子でまだまだ話したいとごねごねだったが、強制終了させた。
自室に戻り、エレナとお茶をして昨夜考えたことをふまえてダンの考察を話した。
「クレアは本当に…はぁ。それはもうそういうことよ。だって他の男性ではときめかないのでしょう?」
「ときめく?」
「ドキドキしたり恥ずかしくなったり、嬉しくなったり。特別で大切で、もっとずっとそうしていたいなと思ったりは普段はしないでしょ?殿下とは?」
想像してみて、やはり結果は昨日と同じ。
「そうね。否めないわ。」
エレナは興奮しそうなのを我慢するように、胸に手を当ててお茶を飲む。
「クレア、殿下に何でも良いからお会いする口実を作ってお会いしてみるのよ。今わかっていることをちゃんと本人を前に実感できればもう疑いようもないでしょう。お会いして、自分がどう思うのか向き合ってみるのよ。」
エレナの作戦の下、アイリーンについてのお礼と称してお茶を振る舞うということで殿下をお招きすることにした。
お礼なのにあちらからご足労頂くのも、と思うのだが、領内の新たな特産品とする工芸品のお披露目を兼ねてゴールドガーデンで行うことにした。
新たな工芸品というのが、染め織物なのだが、特殊な染料の開発に成功し、ハーブの香りがするのと、衣服にすれば肌の乾燥を抑えられる効果があるものが出来たのだ。虫除けの効果も確認できている。
何度か洗濯すると効果は落ちてしまうが、洗剤をこの染料を元に作ったものを使用することで効果が持続するし、普通の衣類でも洗剤の効果で同様の効果を得られるようになるのだ。
なので染め織物と言うよりは染料と洗剤が今回の発明だ。
もちろん開発にはハオマとアシャがメインで関わっている。




