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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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客間へ通されてお茶を飲みながら不意に涙が溢れた。


私はずっとアイリーンが羨ましくて、妬ましくて…


…そして仲良くなりたかったのだ。


昔の記憶を振り返りながらその気持ちを思い出すと、なぜこんなにも互いを憎み合うような生き方になってしまったのかと寂しい気持ちでいっぱいになった。


ずっと仲良くなりたかった。

小さい頃は何度も遊んでいた。

少しずつ勉強があるからなどの理由をつけては遊ぶ時間が持てなくなり、そうしているうちに両親も亡くなり、私は生きることに必死で忘れていた。

おそらくはアイリーンも私に負けぬようにと厳しくされていたのではないか。


彼女の孤独と、私の孤独と、互いに孤独が深まりすぎていたのだろう。


実際はどうかわからないが、きっと全ては彼女の父であるオズワルドのせいだったのだろう。

彼の貪欲さのために私たちの孤独が深まったのではないか。


アイリーンが立ち直ることができれば、その時はまた昔みたいに仲良くなれるのだろうか。

その時には私は彼女を許せるだろうか。

仲の良い関係にまでなれるかはわからないが、茶飲み友達くらいにはなれるだろうか。


まだ許せるわけではないが、いつかは許せる日が来ると良いなとも思っている自分に少し驚く。

アイリーンにはアイリーンの事情があるのだ。

ただ、それぞれの事情に誰かを巻き込んではならないと思うのだが、彼女は彼女なりの想いがあったということも事実として受け止めねばなるまい。

だって結局私たちはまだ子どもなのだから。

行き場の無い思いを消化も昇華もできなければどうにか逃さなければ自分が潰れてしまう。

子どもであるがばかりにどうにかする手段もわからなければ、適切なアドバイスを与えられる大人にも恵まれなかった彼女もある意味では被害者なのだ。

そもそものその行き場の無い気持ちの素は周りの大人たちの言動からのものであろう。


これからの未来ではこんな思いを子どもたちが抱えずに健やかに育つことができたらどんなに良いだろう。

子どもの適性などからやりたいことや好きなことをのびのびとできればどんなに良いだろう。

もちろん好きなことややりたいことが自分に向かないこともあるだろうが、選択肢というのは多いに越したことはない。

様々な体験をして、好きなことや得意なことに出会えたら、それだけでも自信を持って生きていけるのではないだろうか。

それでも人生の選択においては希望通りにはいかないだろうが、少なくとも自分は何もできないなどと卑下する気持ちにならずに済むのではないだろうか。


アイリーンとのことだけでも多くのことを考えさせられたのであった。


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