表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
38/398

38


最近は忙し過ぎる程に過密なスケジュールなのだが、それでいて私の満足度は高い。

毎日自分の目標のために生き甲斐とも言えるライフワークに取り組んで、段々と色々なことが成果として報告が上がってくる。


しかし、私の領地運営におけるプランは1年分。

1年以上かかったとしても、やり遂げた後の更なる計画は今の所ない。

一通りの改革が終わったら燃え尽きてしまうのではないか。


領主として認められなかったら。


捕らえられるのだろうか。

いや、一応は爵位を下賜された貴族であり、かつ罪は犯していないのだから、せいぜいテッドとの領主交代くらいか。

テッドとの婚姻も予定通り進めば、だが。

テッドに呆れられたり見放されるようなことがあれば、今度どうなるやらわからない。


追放まではされないだろうが、そんなことになったら何か工芸技術でも学んで生計を立てるか。

細々とした作業は意外と好きなのだ。

作業に没頭していると、何も考えずに済む。

物が出来上がると達成感がある。

更に改善できるところはないかなど反省しつつ、工夫していくような性格である。

きっと天職であろう。


そんなことをぼーっと考えながら、ふらりと夜の散歩へ出かける。

城の周りをぐるりと回るだけの散歩なので、時間にすると15分くらいで終わってしまうのだが。


夜風に当たって考え事をすると、意外とクリアになって答えが出る。

何も考えずとも、ひんやりとした夜風は心地良い。


私は散歩の時はメイドよりも粗末な衣服でハードを被っている。

泥が跳ねようが夜露に濡れようが、木の枝に引っ掛けようが、私の思考を邪魔しないから。

絹のドレスなんて着ては散歩に行けない。

汚さないように、傷めないように、とても気を遣いながら動かねばならない。

元来貧乏性ゆえに。


よほど近くに寄って話しかけでもしなければ私であることはわかるまい。


散歩も不定期で、仕事がある程度片付いた日で、今日のように会議がある日は基本的に忙しいためしない。

役割をしっかり割り振ると、私一人が仕事を抱え込まなくて済むということに気づき、今日は仕事が早く片付いた。

今までは私がせねばとあまり人に仕事を振らなかった。

私でなくとも良いものは振り分けていくことにしよう。

もっと頼ろう。

私の気付かないこともアドバイスをもらえたりと、きっと仕事の仕方としては良いはずだ。

流石に丸投げはしないが。


そんなことを考えていると、それは突然だった。


頭陀袋というのかそんな袋を頭から被せられ、口元を塞がれた。

何があったのかわからない。

手足をばたつかせたり、できる限りの抵抗を試みる。

地面に叩きつけられるかのような衝撃が全身に広がり、息がつまる。

相手は無言だ。誰なのか検討すらつかない。


助けを呼ばなければ。

しかし、声が出ない。

私は殺されるのか?

いや、殺すなら背後から袋を被せるのではなく、いきなり刺し殺すだろう。

誘拐か?私の身なりではただのメイドにしか見えないはず。

顔だってフードで隠れているのだ。

野盗問題が解決していないのに外に出たのは迂闊だったか。

金目の物も持っていないのに、まさか誘拐されるなんて。

私の考えが浅はかだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ