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王城への登城の要請を伝える手紙が届いた。
あくまでも要請であるため、多忙などを理由に断ることは可能である。
オリバー殿が代理として出向けば、彼らがそうであるか否かははっきりする。
ただ、誘拐事件も彼らの仕業であるかどうかはまだ決定的な証拠が無いため、面通しとして私も確認する必要があるのだ。
彼らの容疑は領主たる私への反逆罪、誘拐・監禁罪、ゴールドガーデンへ故意に虫害を発生させた疑い、ローズガーデンの不正取引の幇助の疑いなどだ。
証拠はある程度揃っているため、彼らの監獄行きは免れない。
私への罪が成立すれば、それこそ一生監獄から出てくることは叶わないようだ。
それだけ多くの罪を犯しているということだ。
私が登城せずとも良いには良い。
しかし、私への罪が成立すれば彼らとはもう2度と会うこともなくなる。
ただ、あの時の女がアイリーンである確信は私には無いのだが。
肖像画や私の古い記憶から『おそらく』という程度だ。
彼らと向き合うのかどうかで色々と葛藤を繰り返していた私の背中を押したのは、他でも無いダンだ。
「姉様、僕は姉様が大変だった時のことを知りません。でも僕が思うことは、その時のことをどこかに隠して見えないようにしていてもそれは無くなりはしないのです。姉様がそのことを切り刻むなり燃やすなりすれば別ですが。刻むのも燃やすのも、一度は姉様が手に取らなければ出来ません。このまま見ないふりを続けるのも、手に取って、すぐにまた隠すのも、刻んだり燃やしたりするのも、決めるのは姉様です。姉様が生きやすいようになるにはどうしたら良いのかをお考え頂きたいです。姉様が不安だったり悲しんでいたりするのは僕も嫌です。多分みんなも嫌です。姉様には笑っていて欲しいです。」
そう言って私を後押ししてくれたのだ。
だから私は向き合うことにした。
ダンも家を出る時は父親と向き合ったのだ。
その上で選択したのだ。
私も彼らと向き合って、このまま怯えながら生きていくのではなく、決別したい。
私はオリバー殿と登城することとした。
向き合っても何も出来ないままかもしれない。
何も変わらないかもしれないけれど、何もしないよりは何かを変えられると信じたい。
そして迎えた面通しの日である。
私は前日から食事があまり摂れず、夜も眠れず、挫けそうなメンタルの中でゴールドガーデンを出発した。
朝から王都へ向かい、到着次第での面通しの予定だ。
馬車が脱輪しないかな〜?
道路が何かしらの理由で閉鎖されないかな〜?
子どものようにアクシデントを祈っている自分が嫌になる。




