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今は相手を泳がせるにせよ、もうこのあたりで手を引く可能性もある以上早めに手を打つ必要がある。
早速上奏文をしたため、明日にでも王城へ使者を送り陳述に出向くこととした。
本来は事前にきちんとアポイントを取るのだが、殿下との会談の扱いでその場で許可を頂くことができたため、善は急げと支度を整えた。
使者はオリバー殿とハオマだ。
領内での上層部の最たるオリバー殿と、ハーブはもちろんそれらを栽培するにあたり害虫にも詳しい専門家たるハオマを派遣することでゴールドガーデンとしてのこの『災害』への対応の重要性を訴えるのだ。
私が行くことも考えたが、それでは護衛などを十分整える必要があるためすぐに行動することは難しいと結論づけた。
報告を待つだけというのもとても気を揉むため落ち着かない。
怒りと悔しさ、悲しみはもちろん、このまま追求できなかったらという不安も大きい。
朝になりオリバー殿とハオマを見送ると、ダンとも現状を共有した。
「ダン、今このゴールドガーデンはね、ハーブ栽培が軌道に乗って国中のみんなが喜んでくれるようなお茶とかが作れるようになったのよ。でも悪い虫がハーブを食べちゃうからみんなが欲しいだけの量を作れなくなってしまったの。その悪い虫ね、もしかすると誰かが意地悪してハーブを食べさせたかもしれないの。だからこれからそれを調べてもらえることになったの。誰も悪くなかったとしても、誰かの意地悪だとしても、領のみんなが頑張ってきたことをこのまま無駄にはできないし、みんながお腹を空かせてしまうようなことにならないように私たちは考えていかなければならないわ。今は新しく被害に遭いにくいハーブで凌げると思うけれど、これからの経営のためにもたくさんみんなで相談しなければならないの。ダンももっと大きくなって、たくさんお勉強して、そしたらダンも一緒に相談してくれると嬉しいわ。まだダンは小さいから今は一緒に相談するのは難しいけれど。今が踏ん張り時なの。あなたにも寂しい思いをさせてしまうけど、本当にごめんね。」
私はダンにわかりやすく説明したが、おそらく彼はもっと小難しい説明でも理解するだろう。
領主一族の自覚は維持しつつ、年相応に成長して欲しい。
「そうですね。最近のみんなの話しから理解しています。僕はみんなが頑張っている間にたくさん勉強します。そして僕なりに考えます。みんなの邪魔はしません。みんなとしばらく遊べなくても大丈夫です。僕のことは心配しないでください。」




