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クエンティン殿が王都から戻ると、再度会議を開いた。
「大臣たちも被害がハーブのみということでそれほど影響は無いと真剣に取り合ってくださらなかったのですが、マーティン殿下宛のお手紙をクレア様がご用意頂けたため、そちらをお渡しすることが叶いました。すると殿下御自ら動いてくださり、調査団をゴールドガーデン・ローズガーデンへ派遣してくださることになりました。おそらく明日にでも調査団が到着なさるでしょう。」
クエンティン殿の報告に安堵した。
大臣たちの腰の重さは想定内だった。
そもそも大臣たちも議会の方々も私に好意的では無かったことはわかっており、あくまでも王太子妃候補として上辺でのみ私に擦り寄る素振りを見せているにすぎない。
腹の中ではゴールドガーデンの急速な成長に対して面白く無いと感じているのはわかりきったことだ。
なので、マーティン殿下宛の手紙もしたため、婚約者候補からの私信としてお受け取りいただければこちらのもの。あとは内容は陳述書と同様の内容だ。
殿下にはご迷惑をおかけしてしまうこととなり申し訳ない限りだが、ゴールドガーデンを守るためには使えるカードは使いたいというのも本心なのだ。
ちなみに、その夜エレナからかなり叱られることとなったのは想定外だった。
立場を利用して王族に迷惑をかけることとなったことなどはもちろん、殿下の気持ちを利用したこととなるのは人としてよろしくないと。
言われて初めてご迷惑をおかけしただけでなく、殿下のお気持ちに一切の配慮が無かったことに気付いた。
この問題が解決したら誠心誠意謝罪しようと心に誓う。
クエンティン殿の報告通り、翌日の昼には調査団が到着され、領内の視察を速やかに開始した。
驚くべきはマーティン殿下が調査団長として同行されていたことだ。
「私が調査団を編成して動かしているのだから、私が団長だ。団長が視察せず、調査を行わないなどというのはおかしな話しだろう?」
そう言ってさも当然という態度でお応えになられた。
「だが本音はそなたに会いに来たのだ。会える機会を作れたので私は嬉しいぞ。」
相変わらず殿下はお優しい。
私が気を遣わないようにそのように冗談めかしておっしゃってくださるのだろう。
何故か涙が出てきた。
「殿下、この度は申し訳ありません。ありがとうございます。」
そう言うのが精一杯だった。
客間で殿下と2人でお話しをすることになり、私は何故自分が泣いているのかわからずに戸惑った。
殿下はきっともっと戸惑っておられただろう。




