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貴族社会のあれこれは置いておくとして、私の領地経営についてはハーブバブルによりかなり順調だ。
様々な公共の設備投資はもちろん、ダンたちの学校も新たに建設を計画している段階だ。
そして、学校の学習過程の1つとしてハーブ園のお手伝いをカリキュラムに組み込もうと考えている。
ゴールドガーデン領民だからこそ、ハーブに関する職業に進むことや、他領などへ何某かの職についても、領地のことに詳しいに越したことはない。まぁその場合は他領にハーブ栽培のノウハウを知られるリスクとなり得るが、そうなってもハーブ加工の技術さえ他領を上回れば生き残れるだろう。
郷土愛を育み、自然と共にのびのびと育つ環境を作りたいのだ。
そして、子どもたちの未来の選択肢も増やしてあげたい。
そのためにも学校の環境はもっと整備したいと思っていたのだが、一通りの道路や水路の整備の段取りがつき、いよいよ学校設備に関しての計画が始まったのだ。
カリキュラムの見直しはまた追々していくとして、何かしらの実験施設や、武道、マナー、ダンスなどもできる施設を作っていく。
5年後、遅くとも10年後には全領民の子どもが通う学校を目指す。
ゴールドガーデン領の規範については随時見直しているところではあるが、概ね問題は起こっておらず平和だ。
領内の揉め事も、他領との問題も起こってはいない。
順調な領地経営だと安心していた。
しかし、努力や権力だけではどうすることもできない問題が発生した。
害虫の発生だ。
突然だった。
どこからか突然見たことのない羽虫の大群が襲来した。
領内の至る所で栽培していたハーブが食い荒らされた。
「クレア様、このままでは領内のハーブは全滅です。ハーブ園のようなハウス施設には影響が出ておりませんが、屋外での栽培施設はほぼ被害に遭っています。網をかけたりと対策はしているのですが、虫が小さいため細かい網では日が当たらず育ちません。」
庭師たちも手を焼いているどころではない対応にかなり疲弊している。
「ハーブ園のようにハウスを建てていくにも、すでに羽虫が卵を産んでいる可能性もあるため被害に遭った畑は1度焼かねばならないかと思います。」
ハオマも悔しそうに俯きながら進言する。
「クレア様、今回の羽虫は何故だか他の作物はあまり食い荒らされずに、ハーブばかりが狙われています。羽虫の種類の同定はできませんが、一旦はハーブ栽培はハーブ園のみに絞り、ハーブ畑は焼いたのちにハウスを建てていきましょう。それならば今後の害虫予防も出来ますので将来的には有用かと。取り急ぎ学校建設の予算を当てましょう。他に方法はありません。」




