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リネットの言葉に殿下もふむ、と言わんばかりに納得されたご様子。
「一理あるか。クレアの苦手な社交面でサポートできるコネクションのある令嬢を侍女にできればとは思っていたが、そなたが第二妃に立てば立場的にも同等になる故クレアも気が楽かもしれぬな。一考の余地はある。少し考えさせてくれ。」
「どうせ私への縁談は来ないのですから、ごゆっくりお考えくださいませ。クレアに縁談をお断りされる前にお決めくださいね!あ、クレアが王太子妃とならないのでしたら私も第二妃となるのはお断りでございますからね。悪しからず。」
どんどん進んでいくお2人の会話に私が付いていけない。
置いてけぼりな空気だが、殿下は外堀から埋めていこうと言わんばかりに私にはお構い無しだ。
リネットは楽しそうに笑って私にもアイコンタクトを試みているが、何を言おうとしているのかさっぱり伝わってこない。
曖昧に引き笑い気味になっていると、周りの口を挟めないご様子の大臣方から話しを振られる。
「クレア様は領地の安定は随分と進められたかと思うのですが、今後のためにも是非王都での社交パーティーや茶会などにはご参加頂けますとコネクションも広がりよろしいかと。つきましては当家も茶会を行う予定がございますのでご参加頂きたく存じます。それで是非茶葉なども卸して頂けると宣伝にもなるかと思うのですがいかがでしょうか?」
その言葉を皮切りに、当家にも是非!の嵐が起こる。
どなたのパーティーでも何でも、可能な限りは社交も力を入れていく予定なので参加していきたいとは思うが、簡単に約束を取り付けては後々揉めてもいけない。
とりあえずはオリバー殿とも相談が必要だが、社交界の派閥や既得権益などの兼ね合いも熟考しなければならないというのが本当に面倒だ。
ただでさえ人付き合いが苦手なのに、そんな面倒で小難しいことを頭に入れなければならないと思うだけでもう嫌になる。
「ご招待ありがとうございます。スケジュールも出来るだけ調整してお伺いしたく存じます。改めて招待状を頂けましたらと思いますので、よろしくお願いいたします。茶葉などについてもお好みなどをお伺いしつつご用意できればお手配致します。是非ご相談くださいませ。」
当たり障りなく答えたつもりだが正解がわからない。
本当に社交については不向きなのだ。




