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私の発言の意図を皆様がどう捉えるかはそれぞれ。
ただ、先ほどまでの王太子妃候補として辞退することを想起させる空気は無くなった。
私が辞退すると仄めかせば政界が荒れる。リネットも巻き込まれるだろう。
おそらくマクレガー夫妻もそれを避けるために私を庇ってくださったのだと思う。
周りの方々は口々に私を推すというようなことを仰っている。
この場に居るのは大臣クラスの方々。
殿下のご意志を否定したりせず、流れに逆らわずに波に乗る方が良いことを悟ったのだろう。
殿下も少しムッとしたような態度をとられた。
「クレアの資質については領主としての手腕からも理解できよう。社交面は確かにまだ不安が残るだろうが、これからどうとでもなることだ。それこそクレアの申すように今後の学んでいけば良いだけのこと。公爵家の後見、宰相家の後押しも得られ、これ以上に足りぬ物があるなら知りたい物だな。…これ以上この話題はやめよ。無意味であり無駄だ。他の令嬢を推す話しも受け入れぬ。」
そのお言葉に従い、以降は最近の国政についてや我がゴールドガーデン領における税収増についての話題がメインとなった。
少しずつ観光での来訪者も増え、土産としてであったり交易品としての需要が増えたハーブの加工品により税収も増えて来ているのだ。
もちろん大幅に増えたのではなく、少しずつ月毎に増えてきているという状況だ。
交易については特に問題なく取引ができており、その流通についても質問攻めとなった。
「元々交易を生業とする貴族のツテもあり、侍女の実家も王都の商会であることから、流通については道を整備するくらいであとは皆様のノウハウに支えられております。」
私は当たり障りなく答えるのみ。
「ハーブの加工品はどのように生産量を増やしているのですか?」
「そもそも加工品を作るにあたって、その技術者たちをどのように集めたのですか?」
などなどの質問が飛び交う。
「皆様の好まれるハーブの種類を売れ行きなどから見極めて、それらを優先的に栽培量を増やしています。農民の方々を栽培に適した土地へ移り住んで頂いたり、その土地に合うものを栽培して頂いております。あとは連作出来ない作物はその合間で代わりに栽培して頂いたりですね。技術者の方々は領内外から募集をかけることと、川辺などの開拓によってそれぞれの加工に適した工房を設立致しました。ですので私は場所を提供しただけですね。大体のことはハーブ園の管理者へ任せておりますので、私が何かするということはほぼございません。管理者の裁量に任せておりますので、その者たちが優秀なのです。」
私は大したことはしていないのだ。
ただ周囲の人に恵まれているだけ。




