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王都滞在中の社交三昧のスケジュールは、早速舞踏会翌朝から次々に招待状が届き、調整をオリバー殿がしてくださってどんどん埋まっていった。
昼食、ティーパーティー、夕食とその日はスケジューリングとそれらで終わり、翌日からは朝から慌ただしい予定となっている。
そんな中マクレガー宰相家からの晩餐会にご招待頂き、リネットとの早い再会に喜んでいる。
どういうわけだかマーティン殿下もご一緒だ。
宰相家、宰相補佐、数名の大臣、数名の書記官が招待されており、私の顔つなぎにうってつけの晩餐会だ。
リネットに会えることが最も楽しみなことではあるが。
ちなみにどういうわけだかあのネビル大臣も招待されており、晩餐会が始まるや否やこちらを苦々しげな表情で睨みつけてきた。
特に何か言いがかりをつけられたりということもないため放っておくことにした。
殿下はリネットとの思い出話に花を咲かせ、リネットもとても楽しそうに笑っている。
そんな2人を見て、お似合いの2人だなと改めて感じた。
それは招待客の皆様も感じておられたようだ。
『リネット様と殿下は昔から仲が良く見ていて微笑ましかった』
『リネット様との縁談も元々まとまりかけていたのだし、改めて進めても良いのでは?』
などの声も聞こえてくる。
皆様としては、正妃にリネット、側妃に私を据えるのが良いのではと思っているようだ。
私も同席しているのにそれらが聞こえるように発言されていることが、私は殿下のパートナーとしてだけでなく功績としてもまだ認められていないのだなと再認識する。
私自身もリネットの方が適任だと思っているから良いのだが、伯爵としての功績もまだまだ認められるほどのことでは無いと思うと焦りを感じてしまう。
大した結果を残さないままに分不相応な身分になってしまうと、きっと風当たりは強い。
スペンサー公爵家が私の後ろ盾になってくださっていても、そのこと自体も私には分不相応なのだから立場的には弱い。
殿下とリネットについて周りが微笑ましく話している中、ネビル大臣がここぞとばかりにリネット推しの声を上げていた。
「リネット様と殿下であれば何もかもバランスが取れた良い関係になるのですがね。クレア様も側妃となれば表舞台に立たずとも良くなるため都合が良いのでは?」
なんて言いながら上機嫌に笑っている。
それが殿下のお耳にも入ったのか殿下が反論なさった。
「無礼が過ぎるぞ。そなたらは私の選択が間違っていると申すのか?私がクレアに望むのは側妃ではなく正妃となることだ。何がクレアに足りぬと申すのか?クレアは王妃となる資質は十分に持ち合わせておる。異論があるなら申してみよ。」




