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こちらも落ち着いたところで、マーティン殿下とリネットが戻っていらした。
「クレア、楽しんでいるか?」
「クレア、大丈夫?さっきの聞いたわよ。」
同時に2人から声をかけられたが、リネットの言葉に殿下は驚かれたようだ。
「リネット、さっきのとは何だ?何か問題があったのか?」
リネットは私に視線を向けつつ、ためらいながら答えた。
「…クレアがネビル大臣に絡まれていたようなのです。」
殿下は私に説明を求めるような視線を向けられた。
「正確に申し上げると、ネビル大臣は弟のダンドリオンに問答を試されました。それが騒ぎになってしまいました。私の不手際です。申し訳ございませんでした。」
私の説明とも言えない説明にリネットは私を庇うかのように手を握ってくれた。
「いいえ!クレアは悪くなかったわ!私は途中からしか聞いていないけれど、クレアに落ち度はないわ。」
「ではクレア、どのような問答がなされたのか説明せよ。」
殿下は優しく問いかける。
「ネビル大臣はゴールドガーデンの領地経営についてご心配くださっただけなのです。殿下のご心配には及びません。ダンドリオンがしっかりと問答ができましたので大臣もご納得いただけたようですので。」
私のまたしても説明と言えない説明に、殿下は困った顔をされた。
「失礼ながら差し出口を挟ませて頂きます。」
そう言ってダンは殿下の前に跪いた。
「弟のダンドリオンでございます。姉の申し上げました通り、ネビル大臣は領地について有難くもご心配くださったようでございます。姉からは揉め事を回避するために私に政治的な話しはしないよう事前に釘を刺されていたのです。ですが私も大臣がゴールドガーデンのことをそれほどまでに関心を寄せてくださっているのだと感動いたしましたので、あくまでも子どもの言うこととお聞き流しくださればと問答をさせて頂いた次第でございます。姉の言いつけを破った私が悪いのです。」
ダンの言葉に殿下は微笑み、ダンの頭を撫でてくださった。
「そうか。ではこの話しはもう終いにしよう。よく頑張ったな。」
「畏れ多いお言葉でございます。」
ダンは照れながら引き下がった。
周りの方々も一連のやり取りを見ていたが、大きな騒ぎにならず良かったと思う。
注目されているからこそ、大騒動になった場合政治的にも問題になるだろうから。
とは言え『小さな騒ぎ』だとしてもしばらくは話題にされる可能性は十分あるのだが。




