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「ネビル大臣は僕を貶めることで姉様の評価を落とそうとしたんだ。だから周りの注意を引きつけていたんです。多分姉様のことを良く思っていない。あの人の目はどうやって姉様を攻撃するかを考えてた。僕のことは眼中に無いんだよ。」
ダンの言葉にオリバー殿も頷いた。
「そうかもしれません。以前ネビル大臣のご令嬢がマーティン殿下のお妃候補に上がったことがありました。殿下に手酷く振られたと一時期噂になっていたくらいです。娘は認められなかったのに、クレア様は寧ろ求められている上に選ぶ側の立場であるということで逆恨みされているのかもしれませんね。」
殿下が以前おっしゃっていた縁談で傷つけてしまったご令嬢というのが、もしかするとネビル大臣のご令嬢なのかもしれない。
「その可能性はあっても、ダンに何か影響があるといけないわ。今後はお互いに気をつけましょう。」
「姉様も、姉様のゴールドガーデンも、どっちも馬鹿にされてはいけないんだ。僕が馬鹿にされるのは良いけど、僕のせいで馬鹿にされてもいけない。ネビル大臣は僕が逃げたらそれはそれで何の理想もないとか何とか難癖をつけるつもりだったと思います。だからゴールドガーデンのことを僕だって理解していること、その上で姉様が進めている施策も僕も注力したいことをアピールすれば、姉弟の足並みが揃っていることを見せつけられると思いました。出過ぎたことをしてすみませんでした。」
ダンなりに私や領地のことを思って戦ってくれたんだ。
小さな守られるだけの子どもではもうないのだ。
まだ幼い子どもらしからぬ思慮と言動に感心するが、同時に申し訳ないような心配なような気持ちにもなる。
私がもっとしっかりしていればダンは子どもらしい子ども時代を過ごせたのかも。
そんな心苦しさが押し寄せてきたが、それよりもダンは自分の意志で考え、行動してくれたのだからと思い直した。
「ありがとう、ダン。あなたは自慢の弟よ。私も、ゴールドガーデンも、あなたに守ってもらえたわね。」
その言葉に照れくさそうにエヘヘと笑うダンに、こういう時はごめんねよりもありがとうが正しいのだなと実感した。
そして、私も心が軽くなった。
どうも私はすすんで罪悪感を抱くかのような思考回路となっているようだ。
少しずつ治そうと考え方を変える練習をしているのだが、それを1番実践できたのではなかろうか。
ダンも誇らしそうに胸を張っているため、私もダンにもこれで良かったのだと確信できた。




