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ダンはネビル大臣をまっすぐに見つめて話し始めた。
「まず、ゴールドガーデン領の現在ですが、農地を適切に整備した効果か収穫量は昨年よりも3割増、ハーブ園開設によりその他の業種でも収益が4割近く増えています。それにより税収が昨年よりも2割増、領内の基盤は確実に安定してきています。農業、工業、観光業、その他を発展させるために今後必要なことは、領民個々の力です。具体的に申し上げると、適材適所で個人の能力に見合う職業の選択、それを支援できる基盤作りのための学ぶ場の提供、個々で更に発展させられるよう専門的な知識と考える力を付けることがこれからのゴールドガーデン領の発展のために必要なことであると考えます。全ての領民に教育を行き届かせる。それが我が領の目標であり、私の使命であると考えております。ご質問に対する回答はこれでよろしいでしょうか?」
日頃私に領地の政務についても興味を持って話しをしていたためか、スラスラと答えるダン。
ネビル大臣を見てみると、固まっている。
「出過ぎたまねを失礼いたしました。」
そう言ってダンは後ろへ下がった。
「ネビル大臣?弟が生意気なことを申し上げました。それでは私たちはこれで失礼いたしますね。」
その場を離れようとした私たちだが、周囲で問答を聞いていた方々が次々にダンに話しかけに集まってきてしまった。
ネビル大臣は人の波に押されて視界から消えてしまった。
「ダンドリオン殿、まだ幼いのにそのように将来をお考えとは末恐ろしいですな!」
「ゴールドガーデンはクレア様が王太子妃となられてもダンドリオン殿がいれば安泰ですね!」
などの賛辞が飛び交った。
ダンはご挨拶をそれぞれにしつつ、無駄口をたたかずに謙虚に対応していた。
「所詮は子どもの言うことです。生意気なことを申し上げました。姉上の受け売りもありますので、私ではなく姉上が優れているのです。」
そう言って周囲からの評価を爆上げしている。
聡明で肝の据わった謙虚な少年という印象を人々に根付かせたようだ。
人の波が引いて、周りが落ち着くと、改めて3人で話した。
「ダン、さっきはどうしたの?事前に話した時はああいう時は子どもだからわからないと逃げることにしていたでしょう?あなたが何も考えずにあんなことをするとは思えないけど、相手は大臣よ?政治的な発言で問題を起こしたらおおごとよ。」
ダンに何かしらの火の粉が降りかかるのは避けたい。
ダンに注意しなければと思ったが、驚くべき返事があった。




