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自分で決めたタイムリミット。
誰からも必要とされない、結果を出せないようなら私はゴールドガーデンを去る。
今のところはダンの今後のためにもまだ去るべきでは無いとも考えている。
単に私がここを離れたくないというのもあるが、やはりまだ幼いダンに重責を押し付けるような形になることが申し訳ないのだ。
結局私が領主の座を退いたところで、中途半端に引き継がれたら領内はますます混乱するだろう。
以前は気づかなかったがそういう周囲への迷惑についてを考えると、力不足なりにも私はここで役割を果たすべきなのではないかと思うようになった。
私の進退はさておき、タイムリミットまでになすべきことをなすという目標は変わらない。
気を取り直し、ダンにも舞踏会への同伴を告げるととても喜んだ。
デビュタント前なので、あくまでも私の後ろに共として控えるという形ではあるが、同行が決まった。
もちろん、王室には許可を得ている。
大義名分として、『もし私が王室に嫁いだらダンが領主となるため、早いが社交会について学ぶため』とお伝えすると、すんなり許可が下りたのだ。
もちろん以降のパーティー等にはダンは同伴しないが、王室主催の舞踏会ともなると国中から要人が集まるため、ダンの存在のアピールには最適だと考えたのだ。
ダンはダンスはしない・させないが、ご挨拶は共に行うためにも言葉遣いや礼儀作法をある程度完璧にする必要があるため、エレナとオリバー殿でみっちりとレッスンをしていくこととなった。
「ダン、レッスンはどう?」
私の問いにダンは笑顔でこたえた。
「普段の言葉遣いや立ち居振る舞いとは異なるため難しいですが、それ以上にこんなに早くからクレア様の隣に立つことができることに喜びを感じています。クレア様の弟として恥じぬような振る舞いをし、ゴールドガーデンの評価を高められるよう頑張ります!」
ところどころぎこちなく、それでも一生懸命に話す彼に心強さを感じる。
「ありがとう。ダンは私の後ろでご挨拶だけとなるけれど、お相手からどのように話しかけられるかわからないから。もし対応に困ることがあれば、正直にわからないと言って私に任せなさいね。くれぐれも私やオリバー殿から離れてはダメよ。」
そう言うと、ダンは力強く頷いた。
「もちろんです。必要以上にでしゃばるつもりはありません。できるだけ私は後ろに控えるだけに徹します。」
物分かりの良いダンだからこそ、引くべきところも心得ているだろう。まだ子どもということも利用して逃げるというのも重要な手段だ。




