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ダンにそう話していると、私も少しハッとした。
以前殿下に似たようなことをアドバイス頂いた。
私もダンと同じだったんだ。
少しは変われたと思うが、私だって同じだったんだ。
「クレア…ねえさ、ま…?」
だんが少し戸惑いながら私を呼ぶ。
「なぁに、ダン?」
私が応えると、嬉しそうに笑った。
まるでたんぽぽが大きく花開いたような柔らかであたたかい笑顔。
「クレア姉様、僕本当はもう少し姉様とお話ししたいです。良いでしょうか?」
モジモジしつつもそう言うダンが愛しかった。
「もちろん良いわ。今日はあと半刻は居られそうよ。ダン、おいで。」
私がダンのベッドに腰掛けて膝をぽんぽんと叩くと、ダンは嬉しそうに、でも恥ずかしそうに、遠慮がちに隣に腰掛けた。
「遠慮しなくて良いわ。膝においで。それとも膝枕の方が良いかしらね?」
私の言葉に赤くなりながらおずおずと膝に頭を置いた。
「僕、重いから枕でお願いします。う、あ、う〜ん…重くなくても枕でお願いします?」
ちょっと混乱しているダンはかわいい。
「じゃあ眠たくなっても良いように少し位置をずれましょう。」
そう言ってダンをベッドの真ん中に私の膝枕で寝かせた。
それからはしばらく行けていない授業の様子や、お友達との出来事などをたくさん話してくれた。
私のことも聞いてくれて、今一般向けの学校を作るように検討していることなどを話した。
「学校にみんなで通えたら嬉しいです。今よりもお友だちが増えるってことですもんね。色んな子と関われたら、色んなことを知ることができそうで楽しみです。」
ダンはニコニコと嬉しそうに反応してくれた。
「そうね。そう考えられることも素晴らしいと思うわ。ねぇ、ダンは話し方がとても丁寧になったわね。前の言葉遣いも子どもらしくて可愛かったけれど、なぜ大人みたいに話そうとするの?」
ふとした疑問を投げかけると、ダンは照れくさそうにこたえた。
「僕はいつか姉様の力になれる大人になるんです。クレア姉様だってまだ子どもと言えるのに、もうご立派に家門を立て直して公務をなさっています。僕だって姉様ほどでなくとも、子どものうちからできることを考えて実行していきたいと思っています。なので言葉遣いは先生に教えてもらい、普段から礼儀作法の授業の成果も含めて生活の中で実践していこうと考えました。エレナさんもクレア姉様とそうお変わりないでしょうが、王城に行儀見習いでご奉公なさって、王太子殿下にも認められるほどの優秀な侍女だと伺いました。周りの方々がこんなにすごい人たちなのだから、僕だってやればできると思うんです。だからなんだってやるんです。ゴールデンや周りの方々へいつか恩返しできるように。」
まだ小さいダンがそこまでしっかりと考えていることに驚くとともに、力強い味方に胸が熱くなる。




