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緊張しつつも楽しくお茶会を過ごし、お開きとなってからも、お茶会の会場の素晴らしさはもちろん、王家の皆様の優しさの余韻に浸りつつ、エレナと反省会を行なった。
ある程度反省点などをまとめたあと、エレナは急にオフモードになり、一緒にお茶を飲む。
「クレア、あなたは殿下のことを好き?」
突然の問いの意味がよくわからないままに応える。
「そうね、もちろん好きよ。尊敬しているわ。」
それだけの答えに、エレナはため息をつく。
「そうじゃないわ。以前と今とでは同じ『好き』でも多少は含む意味合いが違うでしょう?それが愛に近い『好き』なのか、単に好意なだけなのか、気持ちの変化も自分で振り返ってみるべきよ。どう?」
よくわらない。
「そうね…。前の『好き』は本当に敬愛の意味でのものかしら。今はもちろん変わらずにその気持ちを持っているわ。…でも言われてみれば少しドキドキと胸が高鳴る感じがあったかもしれないわ。会場に入った瞬間に、あまりにも素敵過ぎて。それを私のためにご用意頂いたのだと思うと、もったいないようなありがたいような気持ちね。でも感謝の気持ちの方が大きいわ。嬉しかったの。」
振り返りながら、殿下が私をもてなすためにご用意くださった数々を、私は喜び、ときめいた。
「でもね、殿下がしてくださったこと、おっしゃってくださったことはもちろん嬉しかったし、ときめきを感じたわ。でも殿下へ恋しているときめきなのかはわからないの。」
殿下のことを尊敬している。だから敬愛している。
でも恋としてお慕いしているのかは少し違う気がする。
「じゃあ、殿下に別の縁談が持ち上がったらどうする?どう思う?」
エレナが突然話を変える。
「そうね、良いことだわ。私なんかよりも相応しい方との縁談が進んだ方が良いに決まっているわ。お相手の方に失礼だからもう今のようにはお会いしたりお手紙のやりとりができなくなるのは寂しいとは思うけれど。」
当然だ。
「じゃあ、お手紙もお会いするのもできなくなって、社交の場でだけお話しできる程度の繋がりになったら?どう思う?」
さっきも言ったが、寂しい。
「寂しいわ。最近は業務連絡ではなく、きちんとお手紙を書けるようになってきて、やりとりが楽しいと思えるようになったのよ。お会いしたら多くの学びがあるの。励ましてくださるの。明日からまた頑張ろうと思えるのよ。」
そういえば殿下も私を思うだけで頑張れるというようなことをおっしゃっていた。
私もそうだ。
「会えなかったら?」
「会いたくなるかもしれないわ。」
「それは前もそうだった?」
しばらく考え込む。
「前はお会いするのも畏れ多かったかもしれない。お会いできないのが当然だと思っていたと思う。今は…お会いするのは緊張するけれど楽しみでもあるわ。」




