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そして翌日には賠償額がまとまり、それを本人であるブラウンへ伝えた。
「そんな金額は私にはお支払いできません。」
何度もそう繰り返す。そう言って逃げ切るつもりのようだ。
「では家屋、店舗などの財産を差し押さえます。よろしいですね?そうするとあなたは帰る家も、事業さえも失うのですよ?」
「ゴールドガーデンにそのような権利は無いでしょう?他領の者の資産を差し押さえるなど…」
「いえ、可能です。なぜなら、事業開始時に国王陛下に申請が通っているのですよ。『ハーブ園の見学についてはゴールドガーデンの裁量により、規範を基に他領の者へも適用される』という内容に許可を得ています。なのでこの処罰については王命同然であるとお考えください。そもそも、ハーブ園については皆様へ注意点をお伝えしておりますよ。それにご同意頂いているはずです。つまり、差し押さえは他領であっても関係ありません。可能なのです。」
嘘はついていない。
実際本当に履行できるのかは私にもわからないが。
「クレア様、本当に私には支払えないのです。しかし、私の資産が差し押さえられることは避けたいのです。わがままを承知の上でどうにかご容赦いただく方法はございませんか?」
段々と必死になり、余裕が無いようだ。
「賠償を甘くする前例を作ると、後々の他領との関係に影響が出てしまいます。特に貴族に対しては。あなたは貴族でも無い平民ですから、こちらで罪を犯した貴族が今後出た場合にあなたの前例を出されると減刑を受け入れなければならなくなります。平民は減刑されるのに貴族は減刑されないなんてと言われることになってしまいますからね。そこはご理解いただけますか?」
「理解しております。しかし…」
「その上で、あなたの減刑を許すと、今後のゴールドガーデンの損失は計り知れません。あなたは私たちゴールドガーデンに泣いて目を潰れとおっしゃるのですか?」
とうとう返す言葉を無くしたようだ。
「『あなたが』犯した罪ですもの。『あなたが』償うのは当然ですよね?ブラウン殿。」
裏で糸を引く者が居ないか、『あなたが』と強調しておく。
しばらくの沈黙とともに、俯きながら拳を握り、叫んだ。
「確かに私が行なったことは許されません!ですが、私も命じられたのです!貴族に命じられたら平民は断ることができましょうか?私には抗えなかったのです!全ての責を私が負うのは納得ができません!!」
とうとう認めたのだ。
前進した。
「ではあなたの知る事実を教えてください。その上で規範に則り減刑できるか考えましょう。嘘、偽りは許しません。次の聴取が最後のチャンスです。その次はありませんよ。」
「勿論でございます。嘘偽りなく、正直にお話し致します。」




