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もう2度と大切な人たちをあんな目に合わせたくない。
もちろん誘拐されている間の生活は怖かった。
でも自分以上に大切な人たちが、私の目の前で私のせいで傷つけられることの方が怖くて仕方がないのだ。
ローズガーデン側の動きがローズ嬢の独断なのか、何某かの組織的なものなのか、ローズガーデン領としての行動なのか、今後の動きを確認していかなければならない。
願わくば、このまま何も起こらずに取り越し苦労で済めばと考えてしまう。
アイリーンがいるかもしれないと言うのも勘違いで、このまま何も無ければ良い。
悶々としながら数日を過ごし、マリー殿から前回のメンバーでの小会議の要請があった。
「ローズガーデン領の情報ですが、結論から言うとローズ様の賓客はアイリーン様で間違いないようです。こちらへの迷惑行為については相変わらず方々へ依頼を出しているようですね。ローズガーデン領としてではなく、あくまでもローズ様の独断ということのようです。アイリーン様とは元々仲が良かったということもありますが、やはりクレア様が皇太子妃候補となられたことからクレア様のお立場を悪くするために手を組んでいるようです。オズワルド様もローズガーデン領に潜伏しているという情報も得ました。オズワルド様に関しては特に手出しはしていないようですが、クレア様の失脚を望んでアイリーン様、ローズ様へ入れ知恵をしているようですわ。」
一体どうしたらそんな情報を得られるのだろう。
昔読んだ絵本に出てくる「しのび」という者でも雇っているのだろうか?
もはやプロの情報屋レベルなのではないかと思う。
プロの情報屋のレベルを知らないけれど。
「そうですか。よくこの短期間で情報を集めてくださいました。ありがとうございます。今のところは迷惑行為も一旦落ち着いたのか動きがありませんので、引き続き警備を続けていきましょう。」
エレナが私の言葉から続ける。
「警備のお話なのですが、ハルバードが引き受けるとのことです。ただ、今は別件対応中とのことであと1週間待ってくれと申しておりました。」
ハルバード殿ともまたお会いできるようで少し嬉しくなった。
「そうですか。1週間後にハルバード殿をお迎えできるように滞在場所、警備の人員などを整理しておいてください。城で過ごすのか、ハーブ園で過ごすのか、どちらの方が良いと思いますか?」
ハーブ園の近くにある管理棟か、城の客間か、どちらでお過ごし頂くかで準備が変わってくる。




