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「わかったわ。明日引き継ぎをしたらすぐにハーブ園に向かうわね。当面は泊まり込むとして、落ち着くまでは戻らないってことで良いのかしら?とりあえずは定期的には現状報告に戻るようにするわね。」
「えぇ、お願い。何かあればすぐに知らせて。」
ハオマのあの様子はエレナにこの件の報告をするのに緊張でもしていただけなのだろうか?
よくわからない。
とりあえずはこの件の解決のためにも2人が集中して当たることができるようにしなければ。
そこで仲が更に深まるなら尚良しだ。
誰が何のためにこのようなことをするのだろう…?
競合する他の商会などか?
何にせよ、罰則を周知すれば落ち着くはず。
落ち着かなければそれこそ話しを聞いてみれば意図もわかるだろう。
ハオマもエレナも、これを機に変なことに巻き込まれなければ良いが。
そして急ぎハーブ園の見学についての制度を取り決めた上で説明係や見回りなどについても決定し、1週間もすると定着してきた。
ただ、他所からの貴族方からは面倒だと嫌がられたが。
今のところは嫌がらせは落ち着いていると言う。
まだ罰則規定も周知したばかりなので、きっと警戒しているのだろう。
お客様方もこの仕組みに慣れた頃こそが危ないのだ。
案の定、制度開始から3週間が経過する頃にそれは起こった。
飲酒して酔った男性貴族が、苗場を踏み荒らして、注意した者へ暴行を加えた。
「私は酔っていたのだ。覚えておらん!私が覚えていないことを良いことに罪をねつ造するというのか?!それならばこちらにも考えがある!」
勾留中の取り調べでそう息巻いて謝罪する気配はない。
私も立ち会ったが、逆に王都へ訴えてやると言わんばかりに怒鳴り散らしていた。
「記憶を無くすほど酒に酔っていれば何をしても良いのですか?事前に迷惑行為についての罰則はご説明しておりました。ご自身を律することができないのならなぜいらしたのですか?貴族たる者が自律できずに民の手本となりえましょうか?いかがお考えですか?」
私の言葉に更に怒りはヒートアップしたようだ。
「小娘が生意気な!私を誰だと思っているのだ!私はローズガーデンのロドリゲス男爵だぞ!」
言うに事欠いて小娘だの生意気だのと聞いて呆れる。
「丁寧に事情を聴取しておりますし、勾留中も丁重に対応させて頂いているはずですが、何かご不満でも?申し遅れましたが、私はゴールドガーデン領主のクレア・ディアスと申します。どうやら爵位で申し上げますと私の方が立場が上のようですね。私はまだ貴族社会の常識に疎いのですが、貴族社会では身分が上の者に楯突くのも年長者の特権なのでしょうか?それともまだお酒が抜けずに酩酊していらっしゃるとでも?」
私の言葉に怒りを表しながらも言葉を詰まらせた。




