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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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エレナとの恋愛談義もそこそこに、執務に戻る。

愛とは?幸せとは?

そんな哲学的なことを考えても、私にはどちらもわからなかった。

ただ、幸せについては以前よりも理解できているつもりだ。

だって今のこの生活がまさに幸せなのだから。

仕事があって生き甲斐となっていることも、エレナをはじめ、色んな方々に支えて頂けていることも、友情や愛情を向けて頂けていることも、着るものや食べ物や寝るところに困らないことも、それは当たり前では無い『幸せ』。

愛についてはまだわからないなりにも、友情や家族愛的な感情は理解できているから、きっとその内より理解できる日が来るだろう。

かわいい物や美しい物に胸をときめかせる感情と似ているのだろうか?それだって『欲しい・自分の物にしたい』『大切にしたい』などの気持ちになるのだから、恋と同じでは無いか?

恋や愛が本能として組み込まれる感情なのだとしたら、私にはそれが先天的に欠如していると言うことか。後天的に授かる感情ならば良いが。


執務中もまだ集中出来ないのであった。


しかしやるべきことはやはり山積みなので、徐々に頭を切り替えていく。

今取り組んでいる仕事の全ては、領民が幸せに暮らすため。

でも自己犠牲的に人々の為に働くわけではない。

要は自分の存在価値を、他人から求められる自分を作りたいのだ。

まだまだ経験もなく、しかも令嬢としてすらまともな教育を受けていない小娘伯爵の領主。

色恋沙汰ばかりがピックアップされてはたまらない。

実績を重ね、周囲に認められなければならないと焦りばかりが募る。

そんな中での縁談なんて私の経験値からはどれに集中して良いのか、日々ミスしないことで精一杯なのも事実。

全てを他人事のように客観的にみて、考えられたら良いのに。


煩悩ばかりが頭を支配し、執務が捗らない。

こんな日はいっそ領内の視察に出かけようか。

定期的に領内を見回ってはいるものの、領民との交流をもっと増やしたいとは常々考えている。

思い立ったが吉日とばかりにオリバー殿へ視察という名の気分転換へ行く相談をし、最低限の護衛の手配と行き先はハーブ園周辺ということでこれから向かうことを連絡した(もちろん出迎えや歓待不要ということで)。


エレナを伴ってハーブ園へ行くと、ハオマが出迎えてくれた。


「ハオマ、忙しいのに出迎えをありがとう。でも出迎えは不要よ。その分他のことをするとか、あなたの休憩にあててちょうだい。私が勝手に来ただけなのだから。」


そう言うと、ハオマは少しはにかんでいるではないか。


「いえ、せめてご挨拶くらいはさせてください。エレナにもあそこの区画に植えるものの相談をしたいと思いましたので。」


これはエレナに会いたいという理由ではにかんでいるのか?と期待してしまうではないか。


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