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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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303


この症状は該当しないようだ。


「会えないと寂しいと思うし、夢でも会いたいと願ってしまう。会えば胸が高鳴る。そなたを笑顔にしたいと思う。本当は離れたくは無いし、ずっと共に在りたいと願う。私もかような気持ちになったことがなかったので戸惑ったのだが、私が感じて思う恋とはそれだ。友などとはここまで離れがたく感じたり、胸が高鳴ることは無いな。思うに、友や家族などの大切な人とはな、『楽しい時間や感情を共有したい』とか、『互いの心の支えとなりたい』と思う関係ではないか?楽しい時も、辛い時も、どんな時も支えあって、助け合いつつ高め合う。そんな心のよりどころに近いのかもしれぬ。恋や愛というのは更に深い執着や情なのであろうな。」


やはり違うのか?

私のこれは単に口説き文句に恥ずかしいというかそのような反応によるものなのか。

「大切な人」については殿下も該当する。

殿下もエレナやオリバー殿なども、関係は違えどもそう思う。


「畏れ多いのですが、殿下は私にとっては少なくとも『大切なお方』であることは間違いないようです。」


私の言葉に殿下は微笑む。


「それは何よりだ。多くは求めぬ。『ただの知り合い』よりも大きな存在となれているのであれば、それだけでも嬉しく思う。」


しばらく言葉を交わさずにお互いにお茶を飲む。

心地良い静寂に包まれ、互いに沈黙する。

あたりはもう静かで、ゆっくりと穏やかな時間が流れていく。


「子どもの頃は何も音の無い空間が苦手だった。周りは『王太子』としてしか私を見てはいない故、孤独に感じていた。静寂は孤独を増長させる気がして、だからこそ常にやかましく問題を起こしてばかりの日々を過ごしていた。今はこの静けさも心穏やかに心地良く感じる。」


殿下が静かに沈黙を破る。


「私も孤独でした。鳥やネズミなどの動物たち以外は、小さな小屋に独りでした。たまに使用人などと顔をあわせることはあっても、静かな日常が当たり前で。静寂は時にいかなる喧騒にも勝るほどの音を感じます。己の心音や、呼吸音、隙間風、静けさ故の耳鳴りも。そのような音ばかりを聴いていました。孤独ですが、それらの音を感じることで『生』を強く実感しておりました。終わらぬ孤独と、それでも生きる己と、いつか変わるその日をひたすら待つ静かな日々。今では有難いことに大切に思う方々が多く居ることで、あの孤独な静かな時間に戻りたく無いと不安に駆られることがあります。」


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