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「だって、僕の知らなかったことや、知らなかったものがこんなにたくさんあるんだもん。『わかること』ってとっても楽しいことだね!わかるとその次を考えられるんだよ。それをどうしたら良いかなって。僕はわからないことがたくさんあるから、たくさんお勉強してわかるようになるんだ!そしたらクレア様やエレナさんたちのお手伝いだってできるよ!」
私の言葉に嬉しそうな笑顔で応えるダン。
そんな風に考えていたなんて。
この子は私が思っているよりもしっかりしている。
「ダン、少し相談したいことがあるの。」
ダンの教育について、あくまでも参考にするためにダン自身の意見を聞いてみることにした。
「あなたはそうやってたくさん学び、考えて、成長しようとしているわ。私もできる限りのことをあなたにしたい。今は家庭教師をつけてお勉強もしてもらっているけど、授業以外の時間はあなたに寂しい思いをさせたりしているのかもしれないとも思うの。同じ年頃のお友達ができれば、一緒に学び、遊び、成長できると思うのよ。だから家庭教師より学校に行ったほうがあなたのためになるのかしらとも思うの。あなたはこれからをどう過ごしたいと思っているのか、何となくでも、ぼんやりとでも良いから聞かせてくれないかしら?」
私の言葉に真剣な顔で考えて、しばらく後に答えた。
「僕はね、たくさんお勉強したい。それでみんなのためになることをできるようになりたい。先生に教えてもらえるだけでも嬉しいの。がっこうって何かよくわからないけど、クレア様も行ってたの?楽しかった?」
学校が何かもわからない子に、いきなり聞いてしまった性急さを反省する。
「学校っていうのはね、みんなで一緒に先生にお勉強を教えてもらうのよ。それで、お友達もたくさんできるし、お友達と時にライバルとしてお互いが成長できるようなところよ。ただ、そこに行くとなると王都に行って、学校の寮というところに住んでお勉強するのよ。私は学校には行っていないの。だから楽しいのか、寂しいのか、どんな感じなのかは知らないの。」
そう告げると、ダンはまたも考えて答える。
「僕はね、どっちでも良いよ。がっこうっていうところに行っても、時々帰ってきて良いんでしょ?お別れじゃないよね?ここでお勉強できるならクレア様にもエレナさんにも、みんなに会えるから寂しくないんだけどね。…がっこうがここにあれば良いのにな〜。」
何気ないダンの一言だが、私もそれは望んでいることだ。




