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アルフレッド殿との対談も終わり、エレナにその日は親子水入らずで過ごすよう申し伝えた。
たまにはエレナも手も気も抜いて過ごしてもらわねば。
私と過ごしてもやはり完全には気は抜けないだろう。
お互いに親友だと思っていても、日々の関わりが仕事の合間であるから。
また明日にでも招待客リストと招待状をエレナと照会して使者へ届けさせよう。
ハオマはしばらくはハーブ園の管理人として仕事を引き受けてくれ、軌道に乗ってきたらまたハオマのやりたい仕事をするということになっており、また薬の行商などをするのか、それとも何か別のことを始めるのか。
それはまだわからない。
アシャはハーブの加工で委託した香油の工房で学ぶことになった。香油のみならず香料全般の抽出や調香なども学ぶ予定だ。
ダンはひとまず、基礎的な読み書きや計算などを学びつつ、楽しく過ごせたらというところ。
ただ、このままでは同じ年頃の友人が出来ない。
王都へ全寮制の学校へ行くようにするのか、このままここで家庭教師に任せるか。
遊び相手は必要だろう。
どうしたものか悩みが絶えないが、いっそダンに選ばせようか。
でもそれでは私にできることを考えるのを放棄しているような気もする。それに、ダンにそんな選択ができるだろうか。
王都に行かせるなんてダンからすると『追い出された』と受け止められないだろうか。
悶々としてここ数日過ごしている。
今まではハルバード殿について回って遊んだり、衛兵の訓練を応援したりと過ごしていた。
ハルバード殿が去って、ダンが寂しい思いをしていないだろうか。
そんなことを気にしてしまう。
今日はエレナも居ないし、ダンとのんびり過ごそうか。
そう思い立ち、仕事を切り上げた。
ダンは庭で庭師さん達と話していた。
「ダン、何をしているの?私も入れてくれる?」
数メートル離れたところから声をかけると、ダンはにっこりと笑って私を迎えに来て手を引いて庭師さん達のところへと連れて行ってくれた。
「クレア様、今ね、お花のこととかね、実のこととかね、教えてもらってたの!このお花は色が違うでしょ?味も違うんだよ〜!こっちの実もそうなんだよ?葉っぱも、お花も、実も食べられるし、良い匂いがするの!」
得意げに教えてくれるダンがかわいくてならない。
「ダンは物知りさんね。見て、聞いて、感じて、そして学んだことを説明できて。ダンは偉いわね。」




