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ハルバード殿の送別会からはや数日。
いよいよゴールドガーデンの特産を売り込むためのお茶会を開催する目処が立ち、招待状を送る準備をエレナとしていたところ、突然のお客様がお見えになった。
エレナのお父様だ。
「お初にお目にかかります。王都商工会の会長を務めさせて頂いております、アルフレッド・トーマスと申します。娘がいつもお世話になっております。」
アルフレッド殿はエレナによく似たお顔立ちなので、初対面なのに安心感がある。
「クレア・ディアスです。こちらこそ、エレナにはいつも何かと支えてもらっています。アルフレッド殿は元々ゴールドガーデンのご出身とか。エレナと初めて会った時にそのようなことを聞いたもので。」
「そうなのですよ。私たち家族は元々はゴールドガーデンのエルム村の近くの町に住んでいました。しかし、先の戦争で町も荒れ果て、一念発起して王都で商いを始めたのです。おかげさまで順調にトーマス商会も大きくなり、私は王都の商工会の会長を兼務することになったのです。里帰りももう父母も他界しましたのでせず、仕事でたまに訪れるのみとなってしまいましたが、今後はエレナもいることですしまた時々お邪魔させて頂きます。」
アルフレッド殿とお茶会にご招待するべき方々をご紹介頂き、その方々の詳細もお教えくださった。
どの方々も流通も販売も、加工などのルートをお持ちの方々なので大変有り難い。
「クレア様は商家にとってこの国で今1番お近づきになりたい方と言ってもよろしいでしょう。貴女様とお近づきになれれば、縁談の成立によらずとも王家の御用達への道も開かれると期待できますから。ゴールドガーデン自体も大変注目度が高いので、誰もがお取引したいと考えています。ご招待されれば皆よろこんで出席するでしょう。」
「どうなるか私自身戸惑いつつではありますが、ゴールドガーデンの発展のためにできることを頑張ります。よろしくお願いいたします。」
アルフレッド殿はエレナのような優しい笑顔で微笑みながら言う。
「クレア様、ゴールドガーデンの地名の由来をご存知ですかな?諸説ございますが、『金の庭』と言い換えられる通り、肥沃な大地が豊かな庭をつくります。『庭』でございます。『畑』では無いのです。」
豊かな大地。その通り、ここは国内でも有数の肥沃な土地。
だが、アルフレッド殿の言いたいこととは?と首を傾げる。




