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いよいよハーブ園の移転の話しが本格的に進み、ハオマとエレナが一緒に過ごす時間が増えた。
ハウス、管理人室の建設に1ヶ月、それから栽培を始める。
同時進行で加工業者もハーブ園付近に移れるよう施設と住居を作る。
それらの手配は全て2人が行なっていく予定なのだ。
これだけ2人でいれば、ハオマだって何かエレナに対しての気持ちが…と周りはヤキモキしている。
そんな中、ハルバード殿がご自宅へお戻りになられることになった。
ささやかながら送別会を開き、庭でとれたハーブのフルコースをみんなで堪能した。
衛兵たちは鼻水を垂らしながら男泣きし、『ハルバード殿の教えをしっかり守り、安全と平和を守ります!』などと決意を伝えていた。
その度にハルバード殿は『ガハハハハ!そうかそうか!励めよ!』と肩を叩いて(吹き飛ばして?)激励していた。
いつの間にか衛兵たちとも師弟関係のようなものができていたらしい。
私だけじゃ無い。
みんなも、ゴールドガーデンも変わっているんだ。
和気藹々とした雰囲気の中にそう感じた。
ダンも寂しそうにしていたが、元々聞き分けの良い子だから引き留めたりはしない。
「僕、ハルバードさんみたいに絶対強くなるからね。優しい人になるからね。だからまた遊びに来てね!」
なんて言っていた。
ハオマとアシャもダン同様に、共にゴールドガーデンへ来たということで私よりも寂しく思っているようだ。
ただ彼らは元々流浪の身でもあったからか、やはりハルバード殿へ引き留めるようなことは言わず、快く送り出す姿勢だ。
またいずれ会えるにしても、別れとは寂しいものだ。
テッドとの別れの時もそうだった。
寂しい。
泣きたくなるような心細さを感じたり、また明日も会えるような期待を抱いたり、『寂しい』なんて一言ではうまく表現できていない気がするけれど、『寂しい』の中には色んな感情が含まれていることを実感する。
『寂しい』だけじゃない。
言葉にはその言葉の意味以外にも色んな意味が、感情があることを皆と交流する中で学んでいる。
ハルバード殿が別れ際に私にかけてくれた言葉も、私はしっかり噛みしめていこう。
「お嬢ちゃんはよ、まずは考えるよりも色んなことをやってみたら良いと思うんだ。仕事は考えてからしか動けねぇにしろ、友達とか、仲間といる時は考えるよりももっと脊髄反射で動いてみたら良い。素直に思ったまま、感じたままな。こいつらはみんな全部受け止めてくれるぞ。もっと遠慮しねぇでどんといけ!そしたらもっと嬢ちゃんの気持ちが表に出せるぞ。」




