280
「「「「「はいっ!」」」」」
手際良く材料を計り、具体的な調整量を料理長の指示のもとで調理していく。
さっきまでが嘘のように美味しそうなクッキーとパウンドケーキが出来上がった。
みんなで味見をすると、料理長は褒め称えた。
「素晴らしいお味です。ハーブの分量も絶妙ですし、焼いてもハーブの香りが飛ばずに大変美味しいです。私では『美味しいお菓子』としては作れても、こうもハーブを活かしきれません。これならゴールドガーデンの人気商品となるでしょうね。今後の参考にさせて頂きます。」
その言葉にみんなで喜んだ。
褒め上手な料理長に感動する。
「僕とっても楽しかった!美味しいお菓子を作れたし、大好きなみんなと食べられて良かった!今度はもっとたくさんの人にも食べてもらいたいね!」
ダンの欲求は更なるステージへステップアップしたようだ。
ハルバード殿にもお裾分けし、ダンはそれはそれは褒められた。
「ダン、お前さんはこんなちっこいのにやる気もあって、実際成果も出して、朝から夜まで粘り強く根気もあって。すげぇやつだな!俺の人生で食ったものの中で1番うめぇ!ダンは天才だな!ガハハハ!」
大変上機嫌でダンをベタ褒めし、この発言以外にも口を開けばダンを絶賛していた。
そのためダンは大変満足気にドヤっていた。
そんなハルバード殿がダンの挑戦中に何をしていたかと言うと、衛兵たちと訓練という名のかわいがりというか、拷問というか…とにかく、衛兵たちの士気を高めてくれていたのだ。
…皆気が引き締まったことだろう。
美味しいお菓子を夕食代わりに食べ、それぞれが達成感と疲労感が猛烈に襲いかかってきたことから解散した。
特にダンは食べたらウトウトと船を漕ぎ始めた。
ハオマとアシャも部屋へ戻り、エレナとお茶してその日は終わった。
こんな日があっても良いかな。
目標に向かってみんなで力を合わせて考え、実践する。
トライアンドエラーをみんなで繰り返しながら成功させる。
失敗しないことばかり考えていたが、失敗しても良いのだなと思えた。
失敗しても、結果的に成功できれば良いし、失敗したからこそ学べることもある。
そんなことは当たり前のことなのだが、実際に1人じゃなくみんなで経験できたからこそそう思えたのだ。
失敗することは許されないと勝手に思い込んでいたことに気づけた。
私は1人じゃないし、一緒に頑張ってくれる仲間がいることを再認識した。
今までも私には仲間がいると認識していたが、心の奥では理解できていなかったのだなと思う。




