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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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「とても美しく、目を奪われました。心も。ずっと見ていたいと思える美しさでございますね。散ってしまうのがもったいないようです。散り際こそ美しいのでしょうが。見ていて切ないような気持ちとともに、温かいような気持ちも有りました。不思議でございますね。ただただ眺めておりました。何も考えずに、ただ『美しい』と思いました。」


素直な感想、そして桜への賞賛を述べると、殿下も饒舌にお話しくださる。


「物事は終わる時こそ美しく在るべきだと思うのだ。終わりがあるからこそ、美しい最期に向けて咲いていくのだ。私の人生もそうでありたい。目に見える美しさではない。仁義や忠義、様々な愛の形、そういった人としての美しさというものを可能な限り極めていきたいものだ。願わくばあの花のように、見るものを魅了するほどでなくとも、私を王として認めてもらえるようにと思う。そして周りに幸福をもたらせる王となりたい。1人でも多く笑顔になれるような、な。」


ご自分のことをあまり語られない方かと思っていたが、いざご自身のお話をして頂けるとかなり熱い思いを抱かれていることがわかった。

食事を終え、よく聞く『あとは若い2人で〜』の流れとなった。


「クレア、良ければ桜を見に行こう。」


殿下にいざなわれ、中庭のベンチに腰掛けて桜をみる。


「殿下、あの桜はなぜ花あかりと名付けられたのですか?」


私の問いに殿下は優しく応えてくださる。


「随分と東の方の国の言葉でな、『花あかり』というのは『桜が満開になって、その鮮やかさでほのかに闇を照らす』というような意味があるのだそうだ。これは満開よりも散る時にこそ光を集め輝くのだが、人々の心の闇を少しでも払えるようにという願いを込めたのだ。そして、この国を光で照らすように。」


「殿下は博識でいらっしゃいますね。とても素敵な名でございます。この桜が国中で咲く頃には、この国の人々が皆笑顔であると良いですね。」


「そう願うばかりだ。この国には戦も無くなり、あとは戦争で失われた笑顔を取り戻せたらと思うのだが。そのためには国が豊かになることが必要だ。国だけが豊かでも、人々の心が豊かでなければ本当の意味での豊かな国ではないだろう。そなたの行おうとしている教育や就労など、改革には大変期待している。子どもの心を育てることがおそらく肝要なのだろう。できる限りの支援はしたいと思うが、他領との兼ね合いもあるのでな。特別にというわけにもいかぬ。難しいところだ。」


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