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父がいて、母がいて、兄弟がいて…
そんな家族の中に迎え入れて頂けたからこそ、より『家族』を感じることができたのだろう。
「クレアさん…?大丈夫ですか?」
オードリー様が心配そうに私に声をかけてくださり、何のことかわからないが、全員が私を同じように心配そうに、気遣わしげにみつめている。
私の頬には涙が一筋流れていた。
それに気付くと、ふっと笑ってしまった。
「申し訳ありません。両親が生きていたら、兄弟がいたら、きっとこのようなあたたかな毎日であったのかと想像してしまいました。そうしたら嬉しいような幸せな気持ちになりまして。決して辛いとか、悲しい訳では無いのでご心配はご無用です。お見苦しいところをお見せしてしまいすみませんでした。」
愛というものを自分が泣くほど渇望していたのだと思い知る。
私への愛もこんなに身近に感じられるのか。
もちろんオリバー殿とテッドだって強い絆と、お互いの想いを感じることはできた。私への気遣いも。その親子の愛は私には客観的なものとしてしか捉えることはできなかった。
やはりオリバー殿とテッドとは一線を引いた様な関係性であったことや、『仕事仲間』的な意識が働いていたから私自身がそういう気持ちで彼らと接することができていなかったのだろう。
家族の団欒に混ざることで、自然と『家族』を意識して私がここにいられたから。
私も父や母、兄や弟に接するようにこの場にいられたから。
「愛というのはこんなにもあたたかいものなのですね。」
私の突然の涙のせいでおかしな空気にしてしまったが、私としてはとても有り難く嬉しい気付きとなったなった。
「クレア、君は我が家の一員だよ。私たちの娘、子ども達の妹であり、姉だ。以前にも言ったが、私は君の後ろ盾という名ばかりのものではなく、本気で養女に迎えたいとも思っているのだよ。君がそれをどう選択したとしても、このままディアスでいるとしても、それでも君は私にとってはもう我が家の娘だよ。」
セドリック様は優しい眼差しと声で私へ家族へ迎えてくださると念を押してくださる。
「そうですよ。あなたはアーノルド殿の娘というだけでなく、私たちの娘同然なのですからね。最早『同然』でも無いわ、娘『決定』よ!決定事項よ。もちろん実のご両親のことはあなたの中で大切に忘れずにいてね。」
「そうですよ。僕たちもクレアさんのことは兄弟だと思っています。ずっと父からあなたのことを聞いていました。『家族として迎えるからな』と言われていましたし、言われてなくてもそのつもりですから。こんな妹がいたら自慢でしかないですし、お互い切磋琢磨できると喜んでいるのですよ。」




