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「これでもかなり割り振らせて頂いているのよ?それでも最終的には私に来るからと思うと、またどこかに回して、それから戻ってきたものを確認するよりも、私でチャチャっとなんて思ってしまうのよね。もっとオリバー殿とも相談してみるわ。テッドも出て行ってしまったし、その分もっと頑張らなきゃな、なんて思っていたけど、仕事漬けで人間的な成長ができなくなるといけないものね。心のゆとり、考えてみるわ。ダンとも遊びたいもの。私の子ども時代のやり直しでもあるわね!」
私は子どもらしい子ども時代を過ごしていない。
だから子どもがする遊びも知らない。本で読んだことくらいはあるけれど、やったことがない。
ダンと遊んであげるのではない。
ダンに遊んでもらうのかもしれない。
「じゃあ私が教えてあげるわ!色んなことをやりましょう。クレアがやったことないようなことを。木登りとか?」
エレナと顔を見合わせて笑った。
「お願いね。木登りは…やったことあるわ。木の実を獲るのに登っていたから意外と得意よ?」
「あら、おてんばなお嬢様だったわね。」
「エレナに言われなくないわよ。」
2人で大笑いして、緊張もすっかりほぐれたころ、夕食へと呼ばれた。
「では私は仕事に戻りますね。お側に控えておりますので、何かあればお声掛けくださいませ。」
そう言ってエレナは移動する私の数歩後ろへ下がってついて来てくれた。
夕食の席では皆様お揃いで、セドリック様からご紹介くださり、エレナの言う通りとてもお優しい素敵な方々だ。
「クレアさんはゴールドガーデンを他とは違う治め方をなさるのでしょう?どのような領地へと改革なさるおつもりなのですか?」
ご長男のオードリー様が話しかけてくださった。
皆様興味深々というご様子で私の方を見る。
「そうですね、肥沃な土地であることを活かして農地を広げるとともに、作物も領内外へ流通させる仕組みを作りました。戸籍の制度も確認し、どこに誰が住んでいるのかも把握できるようになっているので、税の面でも未納などもわかりますし、反対に減免すべき対象も把握できます。事業についてはそれぞれ管轄する部署を設置し、より領民の声を反映させて領地を改革できる仕組みづくりを今は行なっています。その次は規範を作ります。誰もが身分や年齢、性別などによらず公平に物事を判断できるように。そして農業やその他の発展を目指すことによって領民の生活が豊かになります。そうなれば学校を作り、子どもたちを学ばせられると考えています。身分や家の仕事によらず、皆が同じことを学べるように学校を作ります。同時に医師も確保して皆が必要な時に医師に診てもらえるようにしたいと思っています。そうして知識や色々な職業があることなどを子どもたちが知ることによって、子どもたち自身が大人になって自分が何をやりたいのかを決められる力を付けたいのです。自分の運命を、人生をどう選択するのか、いかに努力するのか、自分で考えて生きられるようにしたいのです。」




