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「ハオマは成分の変化とかについてはどうやって学んだのかしら?本?それともお父様が?」
薬草についてかなり詳しいが、子どもの頃にお父様から教わったのだとしても難しい話しを子どもが理解するのも中々困難だろう。
ハオマは病気についても詳しいし、本当に医師にもなれるのではないかと感じるほどだ。
なぜこんなに詳しいのか、気になって聞いてしまった。
「薬草についてや、大まかな病気、症状については父から教わりました。父が亡くなってからは卸先の薬屋や医師から話しを聞いたりして学びました。マンドレイクさんのところにお世話になってからは本も買えるようになったので、それからは本を読んで知識を得ました。読み書きは父から行商などには必要だからと教わっていましたし、あとは知らない言葉などを調べるのは難しかったくらいで必要なことを必要なときに調べて学ぶスタイルです。」
「ハオマのお父様は元々は良家の御子息とかなのかしら?平民で読み書きが出来るのはそれなりに財力のある家や、商家が多いと思うのだけれど?」
ハオマは少し答えにくそうな顔をして話をしてくれた。
「父の実家のことも母の実家のことも僕たちにはよくわかりません。ただ、2人とも読み書きはできましたし、たくさんの物語を話してくれたり、計算などの勉強も教えてくれました。『うちはじじはいないの?』と聞いたことがいるのですが、『じじもばばもうちには居ないのよ。私たちのわがままのためにお前たちにも寂しい思いをさせるわね。』と言っていました。その時はどう言うことかわかりませんでしたが、今思うと駆け落ちしたとか何か理由があって勘当されたのでしょうね。ファミリーネームもあるのか無いのかすら知りませんし、両親がどこの出身なのかもわかりませんから。だから僕たちはお互いしか家族は居ないと思っています。だけど、エレナや皆さんも家族ではなくても僕たちには大切な存在です。そういう方々がいることに幸せを感じています。」
寂しげにハオマとアシャは寄り添い、微笑んでいる。
「素敵なご両親ね。あなたたちに自分で生きるための力を与えてくれたのね。」
こういう時に何と言って良いものかわからない。
私のかけた言葉は適切だったかはわからないが、私は素直に思ったことだ。
「ありがとうございます。とても優しく、強い両親でした。僕たちの自慢の両親です。」
アシャが胸を張って、少し照れ臭そうに応えてくれた。




