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そうなのだろうか。
私は今でも幸せなのだと思っている。
恵まれているなと。
「テッドはあなたを愛していたのでしょう。私にはそんなことは申しませんでしたが。もうすぐ殿下との縁談がまとまるかもしれないとあいつなりに考え、他の男性との仲を深める様子を身近に感じることが怖かったのでしょう。あいつはまだまだ未熟者ですから。親バカですけど、あいつはきっと何か自分の道を見つけて生きていきます。その時はきっと、いや絶対にクレア様の力になります。」
「私は今でも幸せです。これ以上私ばかり幸せになるよりも『みんなの幸せ』というものを優先させたい気持ちは確かにあります。テッドにはたくさんの優しさをもらいました。私もテッドに何かを返していける力を付けていきたいです。そのためにも私の幸せを見つけます。テッドに恥じぬ生き方をいたします。」
私の方がテッドに何もしてあげられていない。
優しくしてもらったり、家族ってこういう感じなのだと教えてもらったり、仕事もかなり力になってくれた。
そんなテッドを追い詰めてしまう様な結果にばかりなってしまった。
テッドがこれからどうするのかはわからない。
またいつか会えた時はお互い幸せであることを願うばかりだ。
朝から気分転換を兼ねて庭に出てみたが、すでにエレナとハオマ、アシャがハーブの手入れをしていた。
「エレナ、この株はそろそろ花をつけ始める。追肥をした方が良さそうだけど、土は今どう調整しているの?」
「その畝は一昨日追肥したばかりよ。確かにその畝の中ではその株が1番生育が早いわね。そこの土はね…」
と、2人で栽培について相談している様だ。
その横で、アシャはそれぞれの葉や花の香りを嗅ぎ、何かを考えている。
「おはよう。みんな早いのね。私もお邪魔するわね。アシャも感心ね。早くからハーブの香りを確かめてるのかしら?」
私の挨拶に3人とも笑顔で迎えてくれた。
「クレア様、おはようございます。昨日の夕方も来たんです。でも、夕方と朝では少し香りが違う様に思って、どう違うか考えていました。」
アシャは元気にそう言うと、またハーブの香りを確認し始めた。
「アシャ、そこのハーブはフレッシュであればあるほど香りが強い。だから葉が段々かたくなってくるにつれて香りも弱く、少し渋みを伴ってくるんだ。その代わり、古くなるにつれて香りは落ちても薬効としては軟膏とか化粧品に混ぜると肌ツヤが良くなるんだよ。栄養価が上がるからね。」
なるほど。
香りの変化や成分の変化にまで気づかなかった。
やはりハオマが居てくれると色々な気づきがあって、栽培も加工も良い案が出そうだ。
何より、エレナとの相性は抜群に良いと思っている。




