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「僕たちはまだ自分たちで何かを成す力はありません。ただ、僕たちに出来ることはあります。ぜひゴールドガーデンで僕たちを働かせてください。」
アシャも続ける。
「僕も調香師になりたい。それなら場所はどこだってなんだって良いんだ。兄さんとエレナがいるならここが1番僕にとって有意義なはず。クレア様、よろしくお願いします。」
その言葉を聞き、ハルバード殿は強面のはずがくしゃくしゃな優しい笑顔で喜んでくださった。
「ガーバッハ‼︎お前らこれから頑張れよ!ハーブ園が賑わったら俺も守衛に雇ってもらうかな〜なんてな!ガハハハ!」
「もちろん、ハルバード殿が良いなら是非お願いします。」
社交辞令なのか、本気なのか、ハルバード殿もノリノリだ。
「そうなるように経営が軌道に乗ることを祈っていてくださいませ。ハオマとエレナが居るから心強いですし、アシャも加工の方で協力してくれるのですもの。私としては怖いものなしです。その上ハルバード殿まで揃えば100人力です。」
思わず笑みが溢れる。
一つずつ。
確実に実を結ぶように種を撒いていこう。
いつか豊かな実りを皆で喜べるように。
そして次は王都行きの件が待っている。
殿下や陛下方へ無礼とならないようにせねば。
エレナと準備状況を確認して眠りにつく。
それでも夜というのは長い時は長いのに、あっという間に過ぎ去って、朝に変わっている。
もう朝なのかとこの後の数日を思うと、あっという間に朝が来ることに戸惑いを感じる。
朝からオリバー殿が訪ねて来られた。
「クレア様、早くから申し訳ございません。エドワードのことなのですが、部屋を訪ねたら置き手紙を残しておりまして旅へ出たようです。これを。」
そう言うと手紙を下さった。
『クレア、今までありがとう。僕にはまだ何も貴女を手助けできるような力が無い。これから自分の力を、どこまでやれるのかを、よくよく考え、試して生きてみるよ。いつか貴女の助けとなれる日が来るよう、頑張るから。貴女は貴女の成すべきことを行い、同時に、貴女の幸せを見つけてください。殿下なら貴女を幸せにしてくれるでしょう。どうかクレアはクレアのために生きることを忘れないで。立場とか、たくさんのしがらみに負けないで、君の幸せを勝ち取るんだ。
それでは元気で。 エドワード・グリーン』
手紙を読み終えると、オリバー殿が話し出す。
「クレア様の幸せとは何なのか、あいつはよく考えていました。お辛い思いばかりされてきた貴女に、領主という立場まで背負って、貴女は自分のことよりも領内の皆のためばかりを優先するだろうと。」




