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そして、マンドレイク殿を安心させるという意味も込めて、誓約書兼契約書を交わした。
『一、マンドレイク商会並びにペリウィンクル商会に何かあれば、ブルーベル・ペリウィンクルの身柄をゴールドガーデン領主クレア・ディアスが引き受け適切に療養させる。
一、療養に必要な一切の金銭的負担はクレア・ディアスが負担するものとする。
上記の条件のもとにマンドレイク商会が保有するシャムロックのクローバーストーンの採掘並びに加工、販売の権利をブルーベル・ペリウィンクルの療養中に限りクレア・ディアスへ譲渡し、得られる利益をゴールドガーデンのものとすることを認める。
ただし、ブルーベル・ペリウィンクルが回復し、療養を終えた際にはこの一切の権利をブルーベル・ペリウィンクルへ譲渡するものとする。』
という内容だ。
万が一にもブルーベル様が回復されずに…という場合も懸念されるが、それについては互いに話せずにいる。
きっと回復される。
そう信じる。
互いに捺印し、正式な契約となった。
レティシア殿への手紙もマンドレイク殿を安心させるためにもすぐに書き上げ、まだ夕方ということもあり明日を待たずに使いを出した。
使いには1番早い往診日の確認を忘れずにするよう念を押して送り出した。
ちなみに手紙には追伸として今後レティシア殿とは個人的にも交流を持ちたいこと、ご都合がつけばぜひ往診の帰りにでもお茶にお立ち寄りくださるようお願いしたいことを書き添えた。
レティシア殿のような仕事に熱心な方々から学べることは多い。
特に学のある方からは今後の私の仕事について必要なあらゆる側面からのアドバイスを頂きたい。
医療面や衛生面についてはまだ体制として乏しい。
疫学を専門にされているレティシア殿ならば、領民がかかりやすい病気やその予防法などの専門的なことをぜひご教授いただきたい。
なんなら疫学調査も含めた研究も兼ねた機関として厚生局を運営しても良いかもしれない。
ゴールドガーデンにも医師はいるが、状態の悪い患者や、症例の少ない病は王都の医師に診てもらうか、対症療法で凌ぐしかない。
王都の医師でしか治療ができないとなると、金銭面の負担もあることから治療を断念せざるを得ない領民もいる。
ゴールドガーデンでなくとも、王都に住んでいたハオマの両親ですら治療にお金がかかるため薬草で凌がざるを得なかったが、薬草ですら手に入れることができない人もいるのだ。




