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翌日、王太子殿下へお礼状をしたためたあと、会議の時間まで雑務を行う。
テッドとも会議の進行を打ち合わせし、そうこうしているうちに会議の時間となった。
本当に時間の経過は早いものだ。
「本日は急遽会議へお集まり頂きありがとうございます。昨日王都議会を見学して参りました。それを踏まえて当領地における議会の設置について議論し、より良い議会とできるよう尽力したいと思います。」
参加者たちは会釈し、資料に目を通す。
「私の考えを資料に致しました。まず議員は20名、貴族から5名、一般市民から15名とします。選出は推薦・立候補それぞれ枠を10名ずつとし、推薦枠は議会解散前のメンバーから行い、20名に絞るよう投票制とします。投票権は全領民としたいのですが、投開票へかなり手間と時間とコストがかかるため、20歳以上で投票所へ来た領民とします。投票所の管理は各村長で持ちまわり、議会からも責任者を置いて不正の無いように注意を払います。推薦は1人につき1人まで。投票ふ1人1票。一家代表として投票へ来ても、投票権は来場者にのみ与える。不正への罰則規定はまた議会が出来てから法を整えて行くとして、公正に出来るよう適宜改定していければと思います。20名の役割は、議長1名、副議長1名、書記官1名、出納管理者2名、農林担当官1名、衛生担当官1名、治水担当官1名、労働担当官1名、税務担当官1名、警備担当官1名、貿易担当官1名、法務担当官1名、工業推進担当官1名、土木担当官1名、畜産担当官1名、生活相談所管理者2名、人事担当官2名という内訳にしようかと思っています。ここで、新設したいのが生活相談所です。これは領民の意見を広く募り、より良い生活のための問題点を抽出し、各担当官へ持ち寄り施策へ活かしていくための部署としたいと考えています。領内で2箇所設置し、定期的に情報共有できる場を設けたいと思います。例えば、『今年は日照不足で作物が育たず税を払うことができない』と訴えがあれば、詳細を確認し、農林担当官と税務担当官へ報告する。それぞれの立場から解決策を提案し、議会にかける。ご意見箱的な立ち位置で、解決へ向けて最適な部署へ問題を振るのです。担当官の決定はまずは立候補、決まらない者は推薦あるいは話し合いで決めましょう。あとはそれぞれの担当官は担当分野の部署を管理しますが、各部署は試験登用制とし、公務員として仕事に従事して頂きます。人事担当官により登用試験を行い、採用されたものを面接などで本人の能力を発揮できる部署へ配置するようにします。例えば、計算問題が得意ならば税務、体の丈夫な体格の良い者は警備などです。採用試験の受験は男女問わないこととしたいです。議会の開催は隔月とし、議会の解散は5年毎または領民の不信任多数の場合。また、何か緊急の問題が生じた際は臨時の議会招集を行います。以上が私の案なのですが、皆さまのご意見を伺いたいと思います。」
皆資料を見入って静まり返っている。
そんな中、オリバー殿から質問が上がった。
「クレア様、大変申し分のない議案でございますのでこれで問題ないかと思います。質問なのですが、人事担当官は採用試験の以降は仕事がないのではございませんか?あとは書記官も議会の際以外は仕事がないのでは?」
新しい部署を作るに当たっては当然このような質問が上がる。
「はい、人事担当官は配置後の人事も適宜見直し、部署異動や人員の振り分けを適宜見直し、過不足ないよう配置すること。また、次年度の採用試験の準備をしていくことでほぼ忙しい状態かと。書記官はそうですね、議会報告書の作成と各部署・村への配布を行うというのはどうでしょう。せっかく議会で話し合っても領民が解決するのか不透明な状態へ不安を抱くかもしれませんし、きちんと開かれた議会運営をしたいと思うのです。開かれたと言えば、王都議会では申し込み制で一般市民も公聴できる席が数席用意されていましたね。いずれはそういったものも取り入れられたらとは思います。」




