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矢継ぎ早にハオマに質問の嵐をお見舞いするマンドレイク殿に、オリバー殿が声をかける。
「マンドレイク様、はじめまして。クレア様の補佐を務めておりますオリバー・グリーンと申します。お見知り置きくださいませ。本日は昼食をご用意させていただきましたので、つもる話は食後にでも。まずは食事にいたしましょう。」
するとマンドレイク殿も一旦拳を握ってハオマへの質問を飲み込んだようだ。
「これは失礼致しました。取り乱してお恥ずかしいところを見せてしまいまいましたね。フェルディナンド・マンドレイクと申します。男爵位ではありますが、実際はただの商人ですので貴族としてのマナーがなっていないでしょうがご容赦ください。」
ふぅーと息を吐き、落ち着きを取り戻してご挨拶される。
穏やかに談笑しながら食事会が進む中、マンドレイク殿はチラチラとハオマの方を落ち着き無く見ている。
早く本題に戻したいのだろう。
もうすぐ皆食べ終わる頃だ。
「ところで、マンドレイク殿。今日はハオマに話があるということでしたわね?デザートがこれからではあるのですけど、そろそろ本題に移って話を進めましょう。」
盛り上がりすぎても途中でデザートを出すために少し熱を下げられるだろうし、デザートを運ぶためにエレナが入室すればエレナも話を少しは聞けるだろう。
「それでは。ハオマ、例の薬の素材は無事入手出来たのだろうか?一刻も早く戻って薬を作って欲しいのだ。」
マンドレイク殿が懇願するようにハオマへ語りかける。
「マンドレイクさん、残念ですが偽物でした。なので薬は作れません。薬を作れないことに加え、そもそも私は一介の薬売りです。医者ではありません。あとはお医者様に診ていただいて治療をお任せするべきかと思います。僕にできることはもう何もありません。」
そう言うとハオマは俯いてしまう。
テーブルに隠れているが、膝の上で拳を握りしめている様子が目に浮かぶ。
マンドレイク殿はハオマの意見を聞いてため息を漏らした。
「そうか。手間をかけて済まなかった。しかし、あの方には医師に見放されてしまったのだよ。いくら治療しても病状が改善しないこと、治療費の支払いが滞りはじめたこと、薬をうまく飲めなくなってきていることから医師からさじを投げられたんだ。だから頼れるのはもうハオマだけなんだ。どうにかならないだろうか?」
非常に懇願しているという印象を受ける。
それが本当の話しだとすると、かなりご状態がお悪いのだろう。
「しかし、僕にはもうこれ以上できることはないんです。お医者様にも直せないものを僕が治せるはずがない。」




