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翌日、エレナと王都行きについて相談した。
「縁談の話しだけど、ダンのこととかハオマやアシャのこととか、事情が前とは違うじゃない?だから侍女をエレナにお願いできれば有難くはあるんだけれど、エレナはここに残りたい?それともついてきてくれる?最終的な決定はエレナが決めて良いわ。私はエレナの気持ちを尊重する。…なんて、要は私はそのことで何か変化があったときの責めを負うことが怖いのよね。ごめんなさいね、ずるいことをしているわね。」
正直にエレナに気持ちを話す。
もちろんエレナについてきてほしい。
だけど、留守の間にマンドレイク殿がいらしたら?
もしもハオマが連れ帰られてしまったら?
離れたことを後悔することになるかもしれない。
それで私を恨んだりしないだろうか。
そんな不安が私をずるい人間にしている。
私が選ばなければ、何かが起こっても私の責任ではない。
だから恨まれることもない。
こんなずるいことを考えて逃げるような人間になってしまうなんて。
もちろんエレナの気持ちを尊重したい気持ちに嘘はない。
残るというなら異論はないし、ついてきてくれるなら嬉しい。
正直侍女が居なくても自分のことは自分でできる。
ただ、体裁というのもあるし、王室に気遣いをさせないようにという意味も込めて自分の侍女を伴うことにしているだけだ。
だから無理してエレナを連れて行く必要はない。
そういうわけでエレナの気持ちを尊重したいというのが1番だ。
殿下からエレナを私に委ねてくださったからこそ、エレナを伴った方が殿下のお顔も潰さずに済むというのも悩む理由の一つだ。
エレナの反応を見ていると、エレナは数秒考えたがすぐに答えを出してくれた。
「もちろん私がお供いたします。殿下のお顔も潰さずに済みますし、何よりクレア様のお仕度は私が1番心得ておりますので。王城のこともゴールドガーデンの誰よりも理解しています。私が適任でしょう。」
迷いのない顔をしている。
「本当に良いのね?マンドレイク殿がその間にアクションを起こす可能性もあるのよ?ダンはセドリック様への紹介を兼ねて連れて行くとして、ハオマとアシャは何かそれによっての影響があるかもしれないのよ?」
エレナがキッパリとした態度のため私の方が心配になってしまった。
「ご心配ありがとうございます。私は自分の仕事を忠実に行うまでです。マンドレイク殿がいらしたとて、私は何も対応は出来ませんし、何かできる立場ではありません。オリバー殿もハルバードも居るのですから何も心配はありません。彼らが居るにもかかわらずハオマたちがシャムロックへ戻るなどのことがあるなら、それは彼の意思でしょう。それなら私は引き止めることもできません。それならここに居ても何もできないことに自分が許せなくなりそうですから。私に出来ることをできる場所にいることこそが正解です。」




