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「ハオマ、トリフォリウム病に似た症状の出る毒薬にはそういう目立たなくて、極少量で効果のあるジャリジャリしたものはあるのかしら?」
ハオマはしばらく考え込む。
「もしかすると、混入させたのだとすると、『マンドレイク』の根を煮出して結晶化させたものかもしれません。それなら幻覚や幻聴により不穏な行動をとったりすることに説明がつきます。神経毒ですので、じわじわと効果を発現し、症状は遷延します。なんとも偶然な名前ですが、可能性はあります。あくまで可能性ですが。」
様々な可能性を検討しつつ、全て憶測でしかないためハオマも書庫に籠もって調べ物をしてみると言ってくれた。
その間にもマンドレイク殿が訪ねてこられる可能性もあるが、その時はその時として対応することに。
私たちも選挙の準備やら、お見合い?の支度やらを行なっていく。
エレナもダンやアシャの話し相手をしながらも、ハーブ園の準備やら庭の手入れやら、通常の仕事をこなしていく。
ハルバード殿も城の周りを巡回してくれたりと、賓客であるのにご協力くださり大変心強い。
それぞれにできることをやる。
そんなことは当たり前だけれど、誰も見返りを求めずに仕事以外のことでもそれをやってくださる。そんな人たちに恵まれて、本当にありがたい。
別にブルーベル様の病気にも、ペリウィンクル家のことにも私たちが首を突っ込んだり、口出しをする必要も無ければむしろすべきではない。
ハオマを守るためにもと始めた情報収集と考察だが、こうしてブルーベル様の不利益となり得る事情を知ってからは、要らぬ世話でも何かできないかと思ってしまう。
皆同じ気持ちでこうして出来ることを担ってくれる。
私のわがままとも、自己満足とも言えることでも、こうして力を貸してくれる。
だから私もみんなのために頑張れるのだろう。
昔はただただ自分のために、生きるために暮らしてきたが、誰かのためになりたいと思えることや、誰かの力になれることがたまらなく嬉しい。
この嬉しいという気持ちのためでなく、単純に自分に何かできることがないかという気持ちになるのはこうして私を支えてくれる皆のおかげだ。
体は15歳でも、中身は一体いくつなのだろう。
10歳そこそこで止まっているのではないだろうか。そのくらいからはほぼ1人で生きることになって、人と接することもほとんどなかったし、自分が生きることに精一杯だったから人間的な成長はしていないかも。
ダンの話を聞いて、父親とは接していたしお使いでお店の人とも接してはいたけど、友達もいなければその最低限の人間関係しかない彼に私が似ていると思ってしまった。




