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「基本的には3食同じ薬だそうです。違和感を感じた薬は、いつものものより少しだけ粉の粒が粗く、硬くてジャリジャリとした印象のあるものが混ざっているそうです。色は全て同じ白い粉状のものでしかも混ざっているのは極少量だそうですので、一見すると違いに気づかないくらいのものだそうです。いつも飲みやすいようにむせないよう果物をすり下ろしたり裏ごししたものに混ぜ込んで飲んで頂いているそうです。通常の物だとすぐに薬が溶けるそうなのですが、例のものだと溶け残りができやすいそうです。それで余計に違いに気づいたそうです。たまたま成分が結晶化してしまったなどの可能性もあるかもしれませんので『違うものが混ざっている』とは断定できませんが。同じ侍女がそれを実際に見たわけではなく、数名が同じような出来事があったという話をしていたようですので何とも信憑性などもわかりません。今得ている情報はここまでです。」
確かに成分などもわからないのだから、薬剤が変性して結晶化した可能性もなくはないのだろうが、なんとも言えない。
それを服用する事で体調やご様子に変化が有れば、限りなく別物だろう。
しかし、特にご様子にお変わりないならば結晶である可能性も高い。
あるいは、結晶化することで成分も変質して薬効が損なわれたり、異なる薬効が現れる可能性もあるかもしれない。
「そうですか。貴重な情報をこんなに早くありがとうございました。もし他に何かわかればお知らせください。そのジャリジャリなものを内服後のご様子が変わられるですとか、お薬の中身がわかったですとか。」
マリー殿が戻られたあと、ハオマの居る客間を訪ねた。
「ハオマ、少しだけ話があります。」
先ほどのマリー殿のお話しを伝え、薬の変質の可能性などのハオマの意見を聞いた。
「トリフォリウム病の治療薬は、対症療法なので一概には言えませんが、どれも繊維質はほとんどなくさらさらとした粉状のものが主です。それらが湿気などの影響を受けたとて、ジャリジャリした塊にはならないと思います。僕の不勉強で何かそういう変質の可能性のあるものもあるのかもしれません。僕も調べてみたいと思います。こちらには書庫はあるのでしょうか?よろしければ拝見したいのですが。他に可能性があるとすれば、お食事が十分摂れていらっしゃらないとすれば、塩を混ぜている可能性もあるのでしょうけどね。」
書庫の使用はもちろん良い。
なんならディアス家の主治医から話を聞いたりしても参考になるだろう。明日紹介しよう。
そう考え、そのまま伝える。
塩か。
もしそうなら診察した早い段階で入れていそうだが。
塩が不足しそうなタイミングで体に追加していくように調整しているのだろうか。
塩ならジャリジャリしてたり、しょっぱいため飲みにくさはあるだろう。その食事で出た果物との相性も悪ければかなり飲みづらそう。
一体その薬は何者なのだろう。




