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こうしてハオマのマンドレイク殿対策は私たちの中では解決した。
あとは実際にマンドレイク殿が来た際にご納得頂けるかどうかだ。
しかし、こちらも正論で攻めるため、これに反論するのは難しいはず。
医師にきちんとした治療をというのがこちらの言い分なのだから。
それに勝る理由なんて無いだろう。
戻ってきて医師と連携して云々と言われればあとはハオマの気持ちをうまく伝えるしか無いが、マンドレイク殿がどこまでをハオマに求めるのか。
というか、初めから主治医に任せれば良いだけの話なのだから。
もし話し合いがあまりにも決着がつかないようなら、その辺の事情も確認したいものだ。
その上でこちらに出来ることがあるなら申し出ようとも思っている。
夕方になると、マリー殿が訪ねて来られた。
おそらくブルーベル様の主治医についてだろう。
「クレア様、ブルーベル様の主治医がわかりました。ペリウィンクル家の主治医はコナー・バース医師がかれこれ20年ほど担当していました。しかし、ブルーベル様の異変から医師の実力不足だとクレームをつけて、アイザック・チェイス医師に変更しています。月に2度の診察と、その度に薬の調整をして処方しているそうです。バース医師がみていた間は奇行を繰り返していたそうですが、チェイス医師に変更後は寝たきりの状態だそうです。奇行はそのため落ち着きましたが、時々うわごとを言ったりというのは続いているようです。」
医師が診察して、処方まで出しているのになぜハオマが必要なのか?
ますます謎が深まる。
「診察・処方は確実に行われているのですか?」
私の問いにマリー殿も困惑気味に答える。
「はい。間違いなく診察は行われており、お薬も診察の翌日に届けられているそうです。それを侍女が飲むのをお手伝いし、確実にお薬も飲んでいるそうです。…ただ、気になることが一つだけあるのですが…」
「気になることとは?」
「ブルーベル様のお世話をする侍女は特定の数名だそうです。なのでこの情報もどこまでが信憑性があるか定かではありませんが…。投薬の際に数日おきにローテーションで侍女が担当するのですが、数日に1度、お薬が違うようなのです。たまたま1回分いつもと違うものがあって、少し飲みづらそうだったそうでして、侍女たちで情報を共有したのですが、その次からは普段のものと同じものだったそうなのです。そんなことが何度かあったそうで。たまたまそういう処方の指示で数日に1度違うものを投薬するのか、自分たちの気のせいなのかと考えていたそうです。」
「気のせいかもしれないと思うほど大きな違いのない薬なのですね?」
具体的な詳細まではわからないため、マリー殿も困惑気味だ。




