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マンドレイク殿対策についてかなり難航する。
「ハオマ、あなたに覚悟があるのならいっそのこと戦いましょう?あなたは医師では無いわ。もちろんあなたの実力はエレナからも聞いているし、マンドレイク殿の執着からもわかるわ。でもね、あなたの仕事に対する熱意やプライドがいくらあろうと、あなたは『くすりやさん』よ。何かあった時は仕事に対する責任は負えないわ。『きちんと医師に治療を任せること』を強く主張したら良いのでは無いかしら?その上で、自立するためにもということでマンドレイク殿にはシャムロックを離れることをお伝えしたら良いんじゃないかしら?アシャもそうよ。2人とも自分の力で生きて行くためにと強い意志を示したら良いのでは?ともあれ、『ローズ様』の件はお医者様にお任せする方向できちんと対応しましょう?」
私の言葉にハオマも同意してくれた。
何だか寂しそうな顔をして。
「そうですね。『ローズ様』のためにも僕なんかではなく、お医者様に治療していただいた方が良いですね。」
「あなたの力不足というわけではないわ。だから『僕なんか』というのは適切ではないのよ。あなたはよく勉強しているし、医師にも負けないほど薬に詳しいもの。ただね、やはり患者様の経過が重篤な状況であったり、何か治療上の問題があれば傷付くのはあなたよ。もちろん患者様の命もかかっているけれど。力になれることと、実際に出来ること・やれることというのは似ているようで違うわ。特に信用や責任という問題があるから。あなたに出来ることというのはきちんと責任ある方へお願いして身を引くことではないかしら?このまま逃げるように消えるのも良いけど、『ローズ様』への責任は果たすべきじゃない?」
少し言葉足らずだったのか、ハオマに誤解させてしまったようだ。
ハオマは医師に匹敵するほど薬に詳しく、病気についてもよく勉強している。
ハオマはやろうと思えば医師にもなれるだろう。
ただ、やはり身分としては医師の資格がない以上はこれ以上ハオマが請け負うべき責務ではない。
「ありがとうございます。僕はマンドレイクさんが来られたら素直に気持ちを伝えます。僕には僕が出来る役割があるけど、それ以上のことは出来ない。出来なくないかもしれないけど、そこへの責任はとれない。クレア様のおかげでそれに気づくことができました。僕は思いあがっていたのかもしれません。頼られるならそれに応えることが正義だと思っていました。患者さんにとっては僕は一介の薬屋であって、医師ではない。心に刻みます。」
ハオマって驚くほど素直で誠実なのね。
エレナのことを考えて、思わずクスリと笑いが溢れた。
「???」
ハオマは不思議そうに私を見る。




