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翌朝、マンドレイク殿が早く動き出す可能性を考慮して、朝一番に朝食前だがオリバー殿とハオマを呼び出して、執務室で話し合いをはじめる。
事前にハルバード殿の見解を伝えた上で。
「まずはハオマ、マンドレイク殿の性格など行動パターンから今後どう動くと考えられますか?」
私がそう切り出すと、ハオマは少し考えて話し出す。
「そうですね。ここに来る前のマンドレイクさんはかなり焦っていて、僕に対して本性なのか暴言や脅迫が表に出るほど追い詰められている印象でした。その上でエレナの提案をわざと飲んだとしたら。まぁエレナの提案に乗らない方針だとエレナも納得しなかったでしょうし、代替案を提示することの意味も無かったのでしょうね。それで見張りも外しているとなると、こちらを安心させて油断をさそっているのでしょうか?マンドレイクさんは意外とねちっこいご気質です。急いでいるからこそ今日、明日にも動き出す可能性があります。そして、何度も何度も訪ねてくる可能性も。僕が出てくるのを待ち構えて連れて行こうとする可能性すらあります。僕は当面行商にも薬草採取にも行けません。」
やはり早く動き出す可能性が高いか。
「オリバー殿、そういうわけで、基本的にはマンドレイク殿がいらしたら私で対応致しますが、来週私は王城へ招かれております。それまで長引く事態になれば、オリバー殿にもご対応頂かねばなりません。私で対応するにしろ、オリバー殿にもハルバード殿にもご同席頂いて、あちらの出方をよくよく観察して頂けたり、適宜アドバイスして頂きたいのです。」
オリバー殿も同意してくださった。
「マンドレイク殿はハオマを返せと要求するでしょう。これにはどう対処しましょうか。『ここには居ない』『帰るつもりは無いそうだ』では諦めずに粘着する可能性もありますね。それなら『流涎香は残念ながらよくできた偽物でした』ということにして、ハオマは本物を探しに既に旅立ったというのはいかがでしょうか?」
それはそれで怪しまれそうな気もするが…。
「何もマンドレイクさんに連絡も伝言も残さずにここを発ったと言うのはちょっと信じてもらえないと思います。それにアシャのこともありますから、アシャだけでも戻るよう言われたりするかもしれません。アシャも一緒だと言っても、やはりそう危険な旅となるかもしれないのに余計信憑性に欠けます。」
ハオマはいつも行商に行くとしても『いつ戻る』など伝えて出かけていたのに、非常事態だからこそ勝手に行動するというのは信じられないだろう。
それに、その後のアシャやハオマが身動きが取れなくなってしまう。
このまま城に匿っておくだけの生活なんて彼らは望まないだろうし、私もそれは避けたい。




