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ハルバード殿はひょうきんな態度をとって、空気が重くなりすぎないよう配慮してくださっているのだろうという印象を受けた。
この方の根幹が中々見えない。
ハルバード殿は一体どのような方なのだろう。
「マンドレイク殿がいつハオマを『迎えに』来るかわかりませんが、その時はお力添え頂けますか?」
私の真剣な問いかけにハルバード殿はまたガハハと豪快に笑う。
「そりゃぁ当たり前だろ。乗り掛かった船どころか、俺は船頭も同様。上手いこと安全を守って目的地へ着くようにしてやるさ。大波は俺が代わりに受けてやるよ。若い奴らは汚ねぇ汚水に濡れることは無え。それに俺はいざとなりゃ戦えんだからな。ガハハ!」
ハルバード殿は大変頼もしい頼れる方だということを再認識した。
マンドレイク殿には頼むから私がここを留守にする時に押しかけてきてくれるなとひたすら願う。
あとでオリバー殿にもハルバード殿の見解をお伝えしてみよう。
その万が一があれば、オリバー殿が対応せねばならないわけだから。
普通の礼儀のある方なら事前に訪問のための文を出すはずだが、『事情が事情で急いでいる』などと押しかけてくる可能性もある。
まずはオリバー殿との情報の共有だ。
それから向こうの出方を伺うことにする。
もしすぐにマンドレイク殿がこちらへ来たら?
ハオマは居ないと追い返す?
それとも彼はシャムロックへ戻る気はないと無いと告げる?
どうするのが正解なのかしら。
オリバー殿と対策を検討しよう。
もちろん、先程のハルバード殿の見解をハオマとも共有した上で、マンドレイク殿をこちらの誰よりも知る彼と対策を決めて行かねば。
ハオマやアシャ、エレナに危険のないように。
ダンはほぼ接触が無いから大丈夫だろう。
私なりにも手立てを考えて、明日オリバー殿とハオマと話し合うよう段取りをする。
エレナはその席には同席させない。
きっとエレナは感情的なものもあり、マンドレイク殿を正確に捉えていない。
みくびってみんなを危険に晒してしまわないように、本人と第三者目線で考えていこう。
エレナはおそらく自分が何とかするとか言い出すだろうから。
マンドレイク殿が来るとなれば、出来る限り私かオリバー殿で対応するつもりだ。
ハルバード殿にも側について頂きながら。
マンドレイク殿が納得できる落とし所を提示し、お帰り頂ければ何より。
でも、表面上納得しただけで、ハオマが連れ去られるとか、何か問題となる可能性だってある。
あまり外を出歩かない私ですら誘拐されたのだ。
薬売りをしている彼はそんな危険なタイミングに溢れている。




