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夕方になり、エレナの希望もあってオリバー殿はもちろん、マリー殿もご同席頂くことになった。
改めて自己紹介からはじめ、ここに来るに至った経緯を確認した。
ダンドリオン君は愛されずに虐げられる生活から脱却するという強い意志による。
エレナは大変賢い子どもであると評価している。
何より可愛いのだと。
ほとんど人と接することもなく、教育も受けられずにいたということで、まずはここで勉学に励んでもらうことにした。
ダンさえ良ければディアス家に養子(と言っても弟)として迎えても良いと考えている。
今後のダンの資質を見極めるとともに、彼の意思が一致すればというところだが。
ディアス家でなくとも迎える先は今後の彼次第で決まるだろう。
ダンが何をやりたいのか、どんな風に生きたいのかをまずは考えられるようにサポートしていくことが私たちのできることかと思う。
ゴールドガーデン内の子どもたちも、まだまだダンのような子どももいるかもしれない。
子どもたちが自分で選択して生きられるようにしたいという想いが益々強くなった。
問題はハオマの事情だ。
シャムロックの長、マンドレイク殿がよくわからない取引のためにハオマを巻き込もうとしていると。
ハオマに薬の調剤を強要すると共に、脅迫してきたそうだ。
ハオマだけでなくアシャや、エレナにまで害が及ぶことを懸念して脱出してかきたそうだ。
ただ、監視役などの追手が一切なく、簡単に逃げ切ったことに対して逆に不安感があるそうだ。
アシャは調香師としての勉強ができさえすればそれで良いそう。
あとはハオマが一緒にいれば。
ハオマが巻き込まれそうになった取引というのが金の売買のようだ。
クローバーストーンの採掘場で金が採れ、それを売買するための相手先に病人がいるらしい。
その治療をしたくて、ハオマに薬を作らせようとしているという。
話しを聞いていくにつれ、当該者は病気ではなく毒を盛られていた疑いが浮上した。
医師がたまには診察していそうなものだが、なぜハオマにしつこく薬を作らせようとしているのか…。
一通り話しが終わってから、マリー殿とこっそりと話しをする。
「マリー殿、今日はお越しいただきありがとうございました。何だか問題に巻き込んでしまったようで申し訳なく思います。ここまで事情をご理解頂けたことですし、もう少しこの件のご協力をお願いしたいのです。」
マリー殿も真剣な顔で頷かれる。
「そうですわね。まさかすごいタイミングでエレナさんもハオマさんたちにお会いになって…。これもエレナさんとハオマさんのご縁、私も関わることになったご縁ということで、もちろんできることはご協力致します。クレア様のお気にされていることは、ブルーベル・ペリウィンクル様をみていらっしゃるお医者様のことでしょうか?」
「お察しくださっている通りです。ブルーベル様がご病気で、ペリウィンクル商会が経営者交代などの事情がおありなら、お医者様がついていないなんて商会の方々などが納得しないでしょうし。お医者様ならハオマでも気づいた病ではない可能性に気づかないはずがありません。お医者様ではなく、ハオマに治療させようとしたことがどうにも腑に落ちないのです。




