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そう答えると、減免措置を取り寄付制にする案で盛り上がり、見返りを何にするかで盛り上がってきた。
そもそも王都のことをなぜ私に聞くのだ。
王都の貴族の事情なんて私は知る由もないのだ。
私に恥をかかせようとでも思ったのか。
怒り半分、呆れ半分である。
この議題は案のみ閣議へ提出すれば良いものだということで、意見のみ出し合って終了した。
「次の議題ですが、最近王都内外で野盗が出没すると報告が上がっています。つきましては防犯対策としてどのように対応していくのが適切か意見を募り、早急に実施していきたいというところなのですが、意見のあるものは?」
「野盗が出没する時間帯・場所はどのように分布しているのでしょうか。共通点があれば対策しやすいと思うのですが。」
その通りだと思う。しかし、その共通点があるならばとっくに対策しれているだろう。
「20時ごろが多く、賊には女がいるらしい。その女が誘ってきて、路地裏へ連れ出したところで仲間が現れ追い剥ぎのようなことをするそうだ。範囲としては歓楽街付近がおおいそうだ。貴族などの富裕層をターゲットにしている。1人でいるところを狙われる。」
そこまでわかってるのか!と逆の意味で驚いた。
そこまでわかっててなぜ対応できないのだろう。
「歓楽街への見回りを強化しましょう」
「高価な衣類や装飾品を身につけないようふれを出しましょう」
「警備の人数を増やしてすぐに対応できるようにしましょう」
などの意見が出る。
色々とつっこみたい。
私も意見を述べたい衝動が抑えられない。
「すみません。外からではございますが、意見を述べることをお許しいただけますか?」
我慢できずに立ち上がり挙手してそう言うと、議長は相変わらずニコニコしながら頷いた。
「これはディアス殿、それでは特別に許可しましょう。本来は傍聴席からの発言は許されないのですよ。」
「お気遣いありがとうございます。まずはこの事実を周知することが重要かと思います。貴族などの富裕層が中心に被害に遭われているとおっしゃいましたが、その詳細をここにおられる方々はご存知なかったようですから。どのような場所でどのような身なりの女がどのように路地裏へ誘い出すのかなどの詳細を被害者から十分聞き取り、周知させる。歓楽街へ行くのは良いが、極力1人にならずに複数名で行動すること。それを周知した方が被害を抑えられるでしょう。警備の増員ももちろん大切ですが、人件費などの問題もあります。いたずらに税を使うようなことがあってはならないと思います。」
そう言うと数名が睨みつけて怒声を放つ。
「みな情報には疎くないのだ!それを田舎者がばかにしおって!」
「そうだ!貴族は耳が早いのだ!気をつけても被害に遭っているから困っているのだ!」
などなど。
「では女の背丈は?服装は?どのような顔立ちなのですか?仲間は何人いるのですか?」
私もつい苛立ち質問してみた。
「っ、それは…」
誰も答えない。
被害に遭った貴族もプライドが高く、詳細には話していないのだろう。
貴族間の耳が早いというのも所詮は噂話だ。
「その詳細を知らずにどのように気をつけるというのですか?現に騙される方が多いのですよね。先程も時間や場所などは質問にあがっていましたね。そもそもそこすら貴族の皆様はご存知なかったのですよね。どうやって気をつけられていたのですか?」
皆黙る。誰も言い返さない。
「私からは以上です。議員ではないのに出しゃばってしまい申し訳ありませんでした。本日はありがとうございました。私はこれにて失礼致します。」
もう議会の見学は一通り済んだので帰ろう。
こんな茶番を見続けられない。
私も苛立つということが中々無いのだが、今日はダメだ。喧嘩を売るようなことまで言ってしまった。




